映画感想その3
昨日の続きです。最近見た映画、または大分前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。
自分のルールを曲げないプロの犯罪者パーカーを主人公としたリチャード・スターク(ドナルド・E・ウェストレイク)の人気シリーズ<悪党パーカー>の『悪党パーカー/地獄の分け前』の映画化。監督は『愛と青春の旅立ち』や『Ray/レイ』で知られるテイラー・ハックフォード。ジャック・ターナーの『過去を逃れて』をリメイク(『カリブの熱い夜』)したりして、もしやノワール・ジャンルに興味を持っているのかもしれないが、本作はこれといった特徴のないアクション映画で残念だった。悪党パーカーを演じるのはジェイソン・ステイサム。かつてパーカー(に当たる人物)を演じたリー・マーヴィン、メル・ギブソンらに比べて若くてアクションの切れがいいし、プロの犯罪者らしい冷静沈着な雰囲気もあって悪くないと思った。事件に巻き込まれる不動産屋の営業を演じてるのはジェニファー・ロペス。地元でくすぶってる疲れた中年女性という役柄で、かつての女王様ぶりが信じられないくらい地味な雰囲気だった。脇役では誰だか一瞬わからないくらい老けたニック・ノルティの姿も。
(『パーカー』 Parker 監督/テイラー・ハックフォード 脚本/ジョン・J・マクラフリン 撮影/J・マイケル・ミューロ 音楽/デヴィッド・バックリー 原作/リチャード・スターク 出演/ジェイソン・ステイサム、ジェニファー・ロペス、ニック・ノルティ、マイケル・チクリス、マイカ・ハウプトマン 2013年 118分 アメリカ)
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『007 スペクター』(サム・メンデス)
007シリーズは自分にとって心底「面白い」と思えないところがあるのだが、ダニエル・クレイグがボンドになってからの作品はとても良いと思う。本作も「死者の日」のお祭で沸くメキシコシティの雑踏にボンドが現れる冒頭からワクワクした。ボンドガール=レア・セドゥの顔つきもなかなか良い。ただひとつ気になったのは、ボンドと悪役クリストフ・ヴァルツの関係性であった。何故肉親ネタに持ち込むのか・・・。過去の因縁話が始まるととたんにスケールが小さくなってしまった。この手のスパイ映画のパロディである『オースティン・パワーズ』シリーズに、どういう訳かしつこく肉親ネタが出てきたのを思い出す。そもそも世界を股にかけるスパイ(と世界征服を企む悪党)に親兄弟は不要じゃないか・・・なんて思ったものだが、本家007においてをや、である。前作と本作でボンドの生い立ちや過去のしがらみは描き切った(と思う)ので、次回作での展開に期待したい。
(『007 スペクター』 SPECTRE 監督/サム・メンデス 脚本/ジョン・ローガン 撮影/ホイテ・ヴァン・ホイテマ 音楽/トーマス・ニューマン 出演/ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、デビッド・バウティスタ、アンドリュー・スコット、モニカ・ベルッチ、レイフ・ファインズ 2015年 148分 イギリス)
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『スター・トレック』(J・J・エイブラムス)
BSで『スター・トレック』が放映されると聞いて、てっきり79年のロバート・ワイズ監督版と思い、パーシス・カンバータのスキンヘッドなど思い浮かべながら見始めたら、2009年の新シリーズ版であった。映画はBeastie Boysの「Sabotage」を大音量で流しながら荒野を疾走する車で始まる。SF映画にこういう現代性を持ち込むのは好きではないのでちょっと萎えたが、後は全く問題なし。おなじみのキャラクターたちが生き生きと描かれ、タイムトラベルによる歴史改変という大技を用いて2人のスポックが顔を合わせる辺り(老スポックを演じるのはレナード・ニモイ)トレッキーならずとも感動した。サイモン・ペッグの出演も嬉しい。
鑑賞して後日、友人のきゃらはん警部と飲んだ時、「J・J・エイブラムスの『スター・トレック』は予想以上に面白かったね」と盛り上がったが、氏曰く「だからこそ、『スター・ウォーズ』撮って欲しくなかった」と。何故と問うと「『スター・トレック』と『スター・ウォーズ』両方やるってのは、いくら何でも欲張り過ぎだろう」とのこと。ううむ、確かに。
(『スター・トレック』STAR TREK 監督/J・J・エイブラムス 脚本/ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン 撮影/ダン・ミンデル 音楽/マイケル・ジアッキノ 出演/クリス・パイン、ザカリー・クイント、エリック・バナ、ゾーイ・サルダナ、カール・アーバン、ブルース・グリーンウッド、ジョン・チョー、サイモン・ペッグ、アントン・イェルチン、ウィノナ・ライダー 2009年 126分 アメリカ)
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ジョン・ヒューストンの自伝『王になろうとした男』An Open Bookがあまりに面白かったので、未見だった『アフリカの女王』(1951年)をレンタルでチェック。第一次大戦下のアフリカ、酔いどれ船長チャーリー(ハンフリー・ボガート)とオールドミスの宣教師ローズ(キャサリン・ヘップバーン)がボロ船<アフリカの女王>号で河を下る。彼らの目的はドイツの戦艦を手製魚雷で撃沈することなのだ。猛獣、激流や大瀑布、ドイツ軍の追撃等々数々の苦難を乗り越えていくが・・・というお話。コメディと呼んでいいくらい軽めのノリで、演技派スターの掛け合いとエキゾチックな風景、ご都合主義的なハッピーエンド、と良くも悪くもオールド・ハリウッド調の明朗な作風であった。面白かったんだけど、ヒューストンの自伝で語られた製作時のエピソードの方がもっと面白い。ヒューストンという人は作る映画より本人の人生の方が面白いというタイプだったんだろうなあと。その辺は本作撮影当時のヒューストンをモデルにしたイーストウッドの『ホワイトハンター ブラックハート』を見ての通りだ。
(『アフリカの女王』THE AFRICAN QUEEN 監督/ジョン・ヒューストン 脚本/ジョン・ヒューストン、ジェームズ・アギー 撮影/ジャック・カーディフ 音楽/アラン・グレイ 出演/ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘプバーン、ロバート・モーレイ 1951年 104分 イギリス/アメリカ)
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『キー・ラーゴ』(ジョン・ヒューストン)
ジョン・ヒューストン監督+ハンフリー・ボガート主演コンビをもう1本。復員将校のボギーが亡き戦友の遺族(未亡人と老父)をフロリダのキー・ラーゴに見舞う。老父が経営する海辺のホテルは釣り客を装ったギャング一味の隠れ家になっていて、主人公は彼らとの対決を余儀なくされる・・・というお話。ハリケーンによってホテルに缶詰にされた登場人物たちの葛藤、最初は無抵抗(戦争で虚無的になっている)だった主人公が次第に闘争心を燃え上がらせていく辺りはパターン通りとはいえ盛り上がる。ホテルという限定空間でのハンフリー・ボガード、ローレン・バコール、エドワード・G・ロビンソン、ライオネル・バリモア、クレア・トレヴァーら名優たちのアンサンブルが見どころ。どちらかといえば地味な作品だが、面白かった。
ひとつだけ妙に気になったことがあって、それは終盤でボギーが船上でロビンソンを倒す場面。ボートの屋根でロビンソンを待ち伏せする煽り気味のショットで、ボギーが薄笑いを浮かべているような凄い悪党面に見えたんだよなあ。アングルのせいか、それとも本当に薄笑いを浮かべていたのか。巻き戻して確認まではしなかったけど、あのショットだけ妙に気になった。
(『キー・ラーゴ』 KEY LARGO 監督/ジョン・ヒューストン 脚本/ジョン・ヒューストン、リチャード・ブルックス 撮影/カール・フロイント 音楽/マックス・スタイナー 出演/ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、クレア・トレヴァー、エドワード・G・ロビンソン、ライオネル・バリモア、モンテ・ブルー 1948年 101分 アメリカ)
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この項続く。