Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『マッドボンバー』(バート・I・ゴードン)


 TSUTAYAの発掘良品コーナーに70年代アクションの怪作『マッドボンバー』が登場!果たして「良品」かどうかはともかく、絶大なインパクトのある作品なので、好き者は必見です! 


 ロスで連続して起きる爆破事件と強姦事件。二つの意外な接点から事件に迫る警察と、二人の犯罪者の攻防を描く。本作は荒々しい70年代アクションの中でも、とりわけ無茶な1本と言えるだろう。行き過ぎたバイオレンス描写には唖然とさせられる。ポスターのデザインも荒々しい事この上ない。爆弾魔チャック・コナーズの荒んだ顔のアップ、その脇には「爆弾男社会を逆恨み ダイナマイトで挑戦 登校の女学生即死 会合中の婦人団体血まみれ 犯人、爆弾抱いて繁華街に逃げ込む」という語呂がいいんだか悪いんだかわからない不穏な文章が踊っている。


 本作の見所は、何より二人の犯罪者の強烈なキャラクターだ。爆弾魔(チャック・コナーズ)は娘をドラッグで失って、その怒りを社会にぶつけまくる。路上でポイ捨てした通行人にからみ、スーパーでレジ係にからみ、喫茶店でウェイトレスにからむ挙動不振ぶりが、最終電車で出くわしそうなリアルなコワさを醸し出す。一方強姦魔(ネビル・ブランド)は犯行を重ねつつ妻をブルーフィルムに撮って楽しむという愛妻家ぶりで、ネビル・ブランドのシワシワの顔がこれまたエロ本専門の本屋で出くわしそうなリアルなコワさを醸し出す。この濃おおおい二人が相手なので、主人公の刑事(ビンセント・エドワーズ)は終始イラ立っているばかり。


 監督はバート・I・ゴードン。かつて吹替洋画劇場で定番だった『巨大生物の島』『巨大蟻の帝国』等々、人や虫やネズミなどが巨大化する映画をたくさん撮っているので、そのイニシャルからMr.B.I.G.の異名を持つ男。本作では監督、脚本、撮影まで手掛けている。


(『マッドボンバー』 THE MAD BOMBER 監督・脚本・撮影/バート・I・ゴードン 音楽/ミシェル・メンション 出演/ヴィンセント・エドワーズ、チャック・コナーズ、ネヴィル・ブランド、クリスティナ・ハート 1972年 91分 アメリカ)


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