『ラブ＆ピース』（園子温）

ラブ&ピース スタンダード・エディション(Blu-ray)

　園子温監督の近作『ラブ＆ピース』（2015年）鑑賞。劇場公開された時、某所のシネコンに足を運んだところ満席で見ることが出来なかった。園子温ってメジャーになったのだなと（別にファンでもないのに）感動した覚えがある。映画秘宝の特撮映画MOOKに特撮場面が紹介されていたのでどんな映画なのかと思ったら、これがファンタジー、なのだった。

　物語のメインはロックスターを夢見るダメ男（長谷川博己）が音楽業界で成り上がっていくサクセスストーリー。ヒット曲がその名も「ピカドン」というあたりが園子温ぽいところ。男は可愛がっていたペットの亀を会社の同僚に見咎められて、トイレに捨ててしまう。下水に流された亀は、捨てられたおもちゃやペットたちが暮らす不思議なコミュニティーへと流れ着く。コミュニティーの雰囲気や、コミュニティーを仕切る老人（西田敏行）が漂わす狂気はどことなく『バットマン・リターンズ』のペンギン風味。やがて傷を癒した亀は、飼い主を探して町へと旅立つが・・・。で、物語は怒涛のクライマックスへとなだれ込む。何でアレがそうなるのか何の説明も無いけれど（ご主人様に会いたい想いの大きさがそうさせたとか？）、映像はパワフルで面白い。

　ただし、映画の結末は着地点がそこ？という肩透かし感があったなあ。この場合のファンタジーとは、「ご主人様を探す亀の大冒険」や「捨てられたものたちの王国を作ろうとするマッドサイエンティスト」ではなくて、ダメ男を陰日向に支える麻生久美子だったという。ファンタジー、だよなあ。でもそれでいいのか。

（『ラブ＆ピース』　監督・脚本／園子温　撮影／木村信也　音楽／福田裕彦　出演／長谷川博己、麻生久美子、渋川清彦、奥野瑛太、西田敏行、深水元基、マキタスポーツ、手塚とおる、松田美由紀　2015年　117分　日本）

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