Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『日本暗殺秘録』(中島貞夫)

 

 

 中島貞夫監督『日本暗殺秘録』(1969年)鑑賞。「血盟団事件」の顛末をメインストーリーとして、幕末・明治・大正・昭和に発生した暗殺事件をオールスター出演で描くオムニバス映画。

 

 「血盟団」事件のエピソードで主人公小沼正を演じるのは、昨年惜しくも亡くなった千葉真一。お得意のアクションを封印しての大熱演でした。各時代の暗殺事件のエピソードは、ほぼ実行の瞬間を再現する形で描かれ、実行犯として若山富三郎吉田輝雄菅原文太高橋長英唐十郎高倉健鶴田浩二らが出演。

 

 最後は二・二六事件。決起した兵士たちが処刑される場面は、顔面を撃たれるショットが延々続くというほとんどホラー映画並みの過剰な演出でインパクトがありました。全編テロリズムを格好いいものとしては扱ってはおらず、陰惨な殺しとして描いているという印象です。作り手がテロリストたちへ寄せる共感と、同時にテロという殺戮行為に対する批判、そして見世物興行としてオールスターで娯楽映画に仕立てようという東映イズムが軋轢を生んでいて、それ故に印象に残る1本になっていたと思います。しかしこの映画、学生運動が吹き荒れていた60年代後半、リアルタイムの観客はどのような感想を抱いたのかな・・・。