Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『秘密殺人計画書』(ジョン・ヒューストン)

 

 

 最近、近所のTSUTAYAが次々閉店しています。昨年後半からこの春にかけて、沿線にあった店が3店も無くなってしまった。最寄りの残る1店は立地が悪くて車じゃないといけないので、ここもいずれは同じ運命を辿るのかなと。今や映画レンタルは配信メインにシフトし、店舗でソフトを貸し出すスタイルはもう時代遅れになったのかなと思います。コロナ禍で店舗に出かける利用客が減ったのも一因かな。個人的には、店舗の豊富な在庫を時間をかけて物色するのが楽しいので、寂しいなと思いますね。書店やレコ屋、CDショップも同様に。それはさておき。

 

 ジョン・ヒューストン『秘密殺人計画書』(1963年)鑑賞。TSUTAYAの「発掘良品」コーナーに並んでいた作品で、こんな映画全然知らなかった。舞台はイギリス。不可解な連続事故死に関連性を見つけた作家が、友人の元諜報部員アンソニー(ジョージ・C・スコット)に調査を依頼するが、作家もまた飛行機事故で死亡。アンソニーは作家が残したリストを調査し事件の真相に迫るが・・・というお話。オーソドックスなサスペンス映画の楽しさを満喫。

 

 監督はジョン・ヒューストン。ジョン・ヒューストンといえば『アフリカの女王』『黄金』『アスファルト・ジャングル』『王になろうとした男』等で知られるハリウッドの名匠。妄執に囚われた男たちが自滅してゆくテーマの映画を何本も撮っています。実際にはかなり多作でフィルモグラフィーには脈絡が無く、作品の出来にはムラがあるという印象があります。本作は犯人捜しのミステリーという題材やテーマにヒューストンらしいこだわりは感じられず、職人的な手腕でさばいている印象ですが、その軽さが意外に良い塩梅です。犯人捜しの本筋とはあまり関係ないキツネ狩りの場面が数回、しかもかなり丁寧に描写されている辺りは、おっさん楽しんで撮ってるなという感じがしましたね。本人もチョイ役で出てるし。

 

 本作はカーク・ダグラス、トニー・カーティス、バート・ランカスター、ロバート・ミッチャム、フランク・シナトラら当時の大スターが本人とわからぬ変装で出演しているという奇妙な作品でもあります。あまりにヘンなので、これがオチに何か関係するのか、単なるお遊びなのか気になりましたが・・・。結果、変装に物語上の意味があったのは犯人役のあの人(犯行現場から毎回変装して脱出する)だけ。有名スターが特殊メイクを施してのカメオ出演、エンディングで正体が明かされるというお遊びの範疇でありました。だから何だといいたくなりますが、ハリウッドの悪友たちが集まって一遊びという余裕が感じられて、これはこれで楽しいと思いました。公開当時はともかく、今ではクラシック映画に興味のない人が見たら、「あれ誰?」と流されそうな演出だけど。

 

 主演はジョージ・C・スコット。ホームズとワトソンよろしく飛行機事故で生き残った軍人ラウル(ジャック・ルー)とコンビを組んで事件の真相に迫ります。ラウルとの会話も楽しい。「引退した元諜報部員」という役柄を演じるスコットは当時まだ36歳、あの貫禄は何なの。あんまりスポーティーな印象がない人だけど、本作ではキツネ狩りに参加し馬を乗りこなす場面などあり新鮮でした。      

             

『秘密殺人計画書』 The List of Adrian Messenger           

監督/ジョン・ヒューストン 脚本/アンソニー・ヴェイラー 撮影/ジョセフ・マクドナルド 音楽/ジェリー・ゴールドスミス

出演/ジョージ・C・スコット、ダナ・ウィンター、カーク・ダグラス、ジャック・ルー、ハーバート・マーシャル、マルセル・ダリオ

1963年 アメリ