Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ナイトメア・アリー』(ギレルモ・デル・トロ)

 ギレルモ・デル・トロ監督の新作『ナイトメア・アリー』鑑賞。流れ者スタン(ブラッドリー・クーパー)が、クレム(ウィレム・デフォー)率いる怪しげなカーニバル一座で働き始める。落ちぶれた読心術師ピート(デヴィッド・ストラザーン)から読心術のテクニックを学んだスタンは一座から独立し、人気の興行師となってゆく。しかし政界の大物たちの秘密を知る精神科医リリスケイト・ブランシェット)と知り合ったことから、スタンは次第に道を踏み外してゆく・・・というお話。

 

 予告編を見たくらいでほとんど予備知識の無いまま鑑賞。予告編にカーニバルの場面が出てきたので、監督の作風からしてカーニバルを舞台にしたホラー(怪しげな生物が跳梁跋扈するような)を想像していたら、これがかなり直球のノワールでありました。何なら「カラーでフィルム・ノワールの世界を再現してやろう」といった企画だったのかなと。前半で描かれる主人公やカーニバル一座の貧しい暮らしと、後半の豪華な建築物、金持ち連中との対比。暗い秘密を抱えたまま、のし上がろうとあがく主人公の葛藤、三様の女たちの存在感。財界・政界の大物たちを蝕むオカルトへの傾倒。映像の雰囲気、特に前半のカーニバルの禍々しい雰囲気などさすがに上手い。終盤、大仕事に失敗したスタンが逃走、警察に追われて家畜を積んだ貨物車に隠れる辺りでオチは見えたけれど、そこまでキチンとやってくれたのが好印象でした。嫌な終わり方なんだけど、ノワールならもうそれ以外ないというか。人心を操ろうとする輩は地獄に落ちるしかないのだ。面白かったのですが、最近のハリウッド映画のパターン通り2時間半の上映時間はいささか長すぎるかな。  

 

 主演のブラッドリー・クーパーケイト・ブランシェットのクラシカルな風格を湛えた存在感。トニ・コレットウィレム・デフォーら芸達者な演技陣。常連ロン・パールマンの出演も嬉しいところ。意外だったのはメアリー・スティンバージェンで、本作一番のショックシーンで場面をさらいます。

 

 ウィリアム・リンゼイ・グレシャムによる原作本、そして最初の映画化であるタイロン・パワー主演『悪魔の往く町』も気になるので近いうちチェックしたいと思います。

 

『ナイトメア・アリー』 Nightmare Alley

監督/ギレルモ・デル・トロ 脚本/ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン 原作/ウィリアム・リンゼイ・グレシャム 撮影/ダン・ローストセン オンガク/ネイサン・ジョンソン

出演/ブラッドリー・クーパーケイト・ブランシェットトニ・コレットウィレム・デフォーリチャード・ジェンキンスルーニー・マーラロン・パールマンメアリー・スティーンバージェンデヴィッド・ストラザーン

2021年 アメリ