Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』(東京都現代美術館)

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 東京都現代美術館で開催中の『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』に行ってきました。日本の特撮映画に大きな足跡を遺した特撮美術監督、井上泰幸氏の仕事を一望できる展覧会です。

 

 井上氏の特撮美術スタッフとしてのキャリアはオリジナル版『ゴジラ』(1954)からスタートしたとのことで、以降『空の大怪獣ラドン』『キングコング対ゴジラ』『海底軍艦』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』『ゴジラ対ヘドラ』『日本沈没』『惑星大戦争』『連合艦隊』『竹取物語』・・・等々様々な作品に関わった人物。東宝の怪獣映画、SF映画、戦争映画、『ウルトラQ』等特撮番組等々、自分も子供の頃から様々な映像作品でその仕事ぶりに親しんできたということになります。

 

 氏のデザイン画、絵コンテ、イメージボード、撮影現場の記録写真(スタッフが8ミリカメラで撮影したメイキングフィルムも)、撮影で使用したミニチュアや、当時を再現したミニチュアセットなど貴重な作品が多数展示されていました。

 

 展示会では『ゴジラ対ヘドラ』『空の大怪獣ラドン』の2本が特に大きく取り上げられているのが嬉しかった。個人的に、映画館で見た最も古い記憶が『ゴジラ対ヘドラ』であり、また怪獣映画のジャンルで最高傑作は『ラドン』と考えているからです。展覧会場に入ると、氏がデザインしたヘドラの大型のスケッチ画がお出迎えしています。

 

 展覧会のクライマックスは、『空の大怪獣ラドン』の破壊シーンで有名な西鉄福岡駅周辺のミニチュアセットです。これは嬉しかったなあ。氏の愛弟子であった三池敏夫氏が再現したものだそうです。細かい造形が面白くて、この展示空間には随分長いこと滞在してしまいました。

 

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 今回は娘(9歳)と一緒に行きました。彼女は特撮映画など何も知らないけれど、きっと興味を持つだろうと思い。案の定、様々なスケッチ画やストーリーボードと実写スチールの比較、水槽に絵の具をたらしカメラを逆さに設置して妖しい噴煙を撮影するメイキング映像、『ラドン』のセットなどに興味津々の様子でした。

 

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 展覧会を見終えて美術館のロビーに出ると、窓の外に高層マンションが見えます。娘は「あれもミニチュアみたいに見えるね!」と言ってました。確かに『ラドン』のリアルなセットにしばらく滞在した後では、現実の街並みを見てもパースペクティブが狂うような不思議な感覚がありました。