Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

映画感想その3(戦争映画編)

 最近見た映画、またはだいぶ前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。今回は戦争映画編。

 

『SF核戦争後の未来・スレッズ』(ミック・ジャクソン) 1984

 TSUTAYAの発掘良品コーナーにて。ミック・ジャクソン監督によるTVムービー。核戦争の恐怖を描いたアメリカのTVムービー『ザ・デイ・アフター』(監督は『タイム・アフター・タイム』のニコラス・メイヤー)が1983年なので、それを受けてのイギリス版という企画だったのかな。何の救いもない真っ暗な映画で、これTVで見た人たちは絶対にトラウマになった事だろうと思います。しかし子供の頃『はだしのゲン』を通過した者としての感想は、これでもまだ甘いと思う。

 

 

 

史上最大の作戦』 (ケン・アナキン、ベルンハルト・ヴィッキ、アンドリュー・マートン) 1962年

 上映時間179分、ジョン・ウェインヘンリー・フォンダジャン=ルイ・バローロバート・ライアンリチャード・バートンロバート・ミッチャムショーン・コネリー他オールスターキャストの戦争大作。どうせ大味な底抜け大作だろうと思っていたら、そんなに悪い映画ではなかった。米英仏独のエピソードを過不足なく描き分け、戦況も分かり易く伝わるってくる。フランス軍がドイツ軍の拠点となったカジノホテルを攻撃するエピソードでは空撮で大スペクタクルが展開。しかし最も印象に残るのはパラシュート部隊のエピソードでした。パラシュートは風に煽られて、想定通りの場所に上手く着地できず、兵士は井戸に落下したり、時計台の針に宙吊りになったり悲惨な目に遭う。中でも兵士が井戸の中に消えて、しばらく井戸を映し続けるショットは思い出すだけで背中が冷たくなる。今回スタッフ調べていたら、複数いる脚本の中に先日『ゴダールと女たち』で興味をひかれたロマン・ギャリーの名が。ますますどんな人なんだろうと気になります。

 

 

 

『砂漠の鬼将軍』(ヘンリー・ハサウェイ) 1951年

 ジェームズ・メイスンが「砂漠の鬼将軍」ロンメル将軍を演じる。邦題から「手強いロンメル軍団に立ち向かう連合軍」みたいな勇ましい映画を予想していたら、全然違う内容だった。ナチスは悪、でもドイツ軍の中には尊敬すべき人物はいたのだという、戦後6年目の映画。脚本はジョン・フォード作品で知られるナナリー・ジョンソン

 

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『陽動作戦』(サミュエル・フラー) 1961年

 第二次大戦のビルマ戦線が舞台。全編、無茶な作戦で疲弊しきったアメリカ兵の行軍を延々と描きます。最後は彼らの英雄的活動を称える言葉で終わるが、勝利の場面は描かれない。フラーは『最前線物語』『チャイナ・ゲイト』『鬼軍曹ザック』『戦火の傷跡』他、戦争映画を何本も撮っていますが、どれもテイスト(というか切り口)が違う。さすが。

 

 

 

『頭上の敵機』(ヘンリー・キング) 1949年

 第二次大戦下、米国戦略爆撃隊の基地アーチベリー飛行場を舞台に、アメリカ空軍部隊で士気高揚に努めた指揮官の孤独な戦いを描く。冒頭、飛行場に爆撃機が帰還し、負傷者が次々機外へ運び出される。頭に被弾し錯乱した機長が担架で運び出されて、「脳が見えてる!」って台詞が生々しい。銃座にちぎれた腕が残っているとか、直接描写はないものの、勇ましさとはほど遠い雰囲気の始まりでした。後半に至るまで戦闘シーンは全く描かれず、物語のほとんどが新任の上長(グレゴリー・ペック)と基地のメンバーの確執と和解のドラマ。戦闘シーンは後半に一度だけ。後は出撃、今日は何機帰還できた、の繰り返し。グレゴリー・ペック演じる上長がパニック障害に陥る終盤は迫真性がありました。

 

 

 

第十七捕虜収容所』(ビリー・ワイルダー) 1953年 

 ドイツ軍の捕虜収容所から脱走を狙う捕虜たちを描く名作。限定空間の人間の出し入れに冴えを見せるワイルダーの匠の技。反骨精神を漲らせたウィリアム・ホールデンがいい。収容所所長を憎々しげに演じるのは映画監督のオットー・プレミンジャー。  

 

 

 

 

ひろしま』(関川秀雄) 1953年 

 戦後8年目の1953年作品だから、実際被爆の体験も生々しい時期のはず。映画としての出来や表現方法はさておき、撮られなければならない必然性がぐつぐつと沸き立っているような映画でした。原爆投下の阿鼻叫喚はもちろんのこと、一番印象に残ったのは孤児となった少年のエピソード。孤児院を抜け出し、被爆して死亡した人たちの遺品や頭蓋骨を米軍相手に売りさばくのだ。

 

 

 

(この項続く)