Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

映画感想その5(ドキュメンタリー映画編)

 最近見た映画、またはだいぶ前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。今回はドキュメンタリー映画編。

 

ホドロフスキーのDUNE』(フランク・パヴィッチ) 2013年 

 未完に終わったアレハンドロ・ホドロフスキー版『DUNE』映画化の顛末を描くドキュメンタリー。ホドロフスキーが想定したスタッフ(メビウスダン・オバノン、H・R・ギーガー、音楽はピンク・フロイド)、キャスト(サルバドール・ダリオーソン・ウェルズミック・ジャガー・・・)で実現していたらさぞかし凄い映画になっただろうなと思うが、やはりこんな企画無理だったろうなとも思う。しかしこうしたドキュメンタリー等を通じて伝説化し、残されたデザイン画や絵コンテから想像される壮大なヴィジョンが、皆の頭の中にしっかりと根付いてしまったという意味では映画化されたようなものなのかもしれない。80歳を迎えるホドロフスキーはほどほどに脂が抜けているような。

 

 

 

『ユーロクライム! 70年代イタリア犯罪アクション映画の世界』(マイク・マロイ) 2012年 

 70年代イタリアンアクションについてのドキュメンタリー。フランコ・ネロ、ハンリー・シルヴァ、フレッド・ウィリアムソン、ジョン・サクソン、アントニオ・サバト、リュック・メランダ、エンツォ・G・カステラッリ・・・。イタリアンアクションゆかりの豪華な面々が次々登場して当時を振り返る。『ブリット』『ダーティハリー』『フレンチコネクション』といったハリウッド製刑事アクションの影響下にあって、よりどぎつく泥臭く変貌した異質な映画群。その泥臭さ、荒っぽさは同時代の東映っぽいなと思ったり。ドキュメンタリーとしては正直言ってもう少し何とかならんのかと思うところも多いですが(イタリアン・アクションの大きな魅力である音楽についてはもっと大きく取り上げて欲しかったところ)、貴重な映像をふんだんに見られたのが嬉しかった。

 

 


真夏の夜のジャズ』(バート・スターン) 1959年 

 超有名な音楽ドキュメンタリーだけど、今回が初見でした。ルイ・アームストロングセロニアス・モンクチャック・ベリーら著名なミュージシャンが次々登場し、彼らのプレイも観客やニューポートの町の様子を捉えた映像も、程よい距離感を保ち、とても居心地が良かった。リラックスしていくらでも見ていられる感じ。特に印象に残ったのは、アニタ・オディ、ルイ・アームストロング。監督のバート・スターンは有名なファッションカメラマンで、『ロリータ』のハート形のサングラスをしたスー・リオンのスチールは彼の手によるものだという。

 

 


『サッドヒルを掘り返せ』(ギレルモ・デ・オリベイラ) 2017年 

 『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』のクライマックスに登場する墓地を、地元スペインの映画ファンが集い再現するというドキュメンタリー。イーストウッドモリコーネのような神様から、当時のスタッフ、カルロ・シーミの娘など召喚する企画力は素晴らしいと思う。多彩なゲストではマカロニ博士のクリストファー・プレイングやジョー・ダンテらに加え、ハードロックバンド「メタリカ」も。メタリカはライブ開始前には必ず「黄金のエクスタシー」(『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』の墓地の場面で流れるモリコーネの超名曲)を流すのだという。知らなかった。動くセルジオ・レオーネの映像(パスタを食べながらインタビューに答える)も貴重だが、亡くなったのが60歳と聞いて驚愕。何なのあの風格は。

 

 

 

(この項続く)