Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

映画感想その7(SF・ファンタジー映画編)

 最近見た映画、またはだいぶ前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。今回はSF・ファンタジー映画編。

 

『山中傳奇』(キン・フー) 1979年 

 デジタルリマスターされた完全版が新宿K's CINEMAにて公開された時見に行きました。192分という長さには怯みましたがこの機を逃すと二度と見れない気がして、意を決して臨みました。アクション映画かと思っていたら、何とファンタジー(というか怪談話)でした。悪霊と剣で闘う代わりに太鼓や鼓、鐘で闘うのがとても目新しく、長尺の悠々たるタッチにも途中から慣れて楽しめました。 

 

 

 

いれずみの男』(ジャック・スマイト) 1968年 

 小学生の頃に買ったSF映画のムックで紹介されていて、ずっと見たかった1本。残念ながらこれは原作(レイ・ブラッドベリ)のイマジネーションに遠く及ばない失敗作だと思いました。登場人物たちの行動原理がよくわからないし、何しろ映像的な面白味が無い。主演のロッド・スタイガーは重すぎるし。 

 

 

 

落下の王国』(ターセム・シン) 2006年 

 カルト的人気の作品。映像先行で発想されたと思しき作品なので構成が雑な印象。なので途中で何の話なのかわからなくなり、最後は「そこに着地するの?」と驚いた。何と映画についての映画、物語を語ることについての映画なのでした。映像の造形には独特の魅力があり、カルト化も納得です。主人公の女の子のたどたどしさが何とも言えずいい味を出していました。

 

 

 

オブリビオン』(ジョセフ・コシンスキー) 2013年 

 エイリアンの襲撃で荒廃し打ち捨てられた惑星に残り、監視を続ける一人の男(トム・クルーズ)。これは意外にちゃんとした「SF映画」でありました。どなたかが指摘していた通り、登場人物が少なく、SFといっても舞台はほとんど屋外(荒地)のオールロケ、と本来ならば低予算の自主映画のような規模の企画。そこにハリウッドスターが主演しているわけですが、ちゃんとお話に仕掛けが施してあるのが面白い。何度も何度も蘇る男の役を誰しも顔を知っているハリウッドスター、死ぬはずの無いハリウッドスターのトムが演じることで妙な面白さを醸し出していました。

 

 

 

『アド・アストラ』(ジェームズ・グレイ)2019年 

 ブラッド・ピット主演のSF大作。あまり話題にならなかったようですが、地味ながら良い映画だと思いました。 冒頭のタワー落下、月面での無音のカーチェイス、クライマックスは何と宇宙サーフィン(カーペンター『ダークスター』!)と、非常に凝った演出が楽しめます。脇にトミー・リー・ジョーンズドナルド・サザーランドと『スペース・カウボーイ』の2人が出演。

 

 

 

『失はれた地平線』(フランク・キャプラ) 1937年 

 庶民の生活と民主主義の素晴らしさを歌い上げるヒューマンドラマを得意とするキャプラのイメージとはずいぶん違った冒険映画。と言ってもアクションはほとんどなくて、秘境の楽園を巡って人間のあるべき姿を問うお話。時間の流れが止まっている設定が面白かった。秘境の楽園「シャングリラ」がどうやらアジアの辺境に欧州人からもたらされた人工的なもの(高度な管理社会)であり、どうやって運営されているのかよくわからない辺りが不気味でした。

 

 

 

『viewers:1』(小林洋介、針谷大吾) 2020年 

 添野知生氏のTwitterで紹介されていたリモートフィルムコンテスト、グランプリ受賞作。2分20秒の短編。これは確かに素晴らしい。SF的アイディア、世紀末のビジョン、現代的な意匠(語り手はYoutuberの成れの果て)、様々な要素がいい塩梅で凝縮されています。

 

 

『百年後の或る日』(荻野茂二) 1933年 

 こちらは竹熊健太郎氏がTwitterで紹介していた、サイレントの短編アニメーション(11分)。画面は手作り感満載ですが、発想が完全にSF。

 

 

ゼイリブ』(ジョン・カーペンター) 1988年 

 再見。初見の時は所詮B級という感想でしたが、改めて見るとこんないい映画だったかと感動しました。主人公が街にやって来る冒頭、ホームレスたちのコミューン、異星人の地下基地、等々、地味だけど画がいいのだ。そしてサングラスをかけると異星人の正体が見えるというシンプル極まりない設定(映画に独自の「境界線」を導入するカーペンター・ルール)で最後まで引っ張る演出の力強さ。

 

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『名探偵ピカチュウ』(ロブ・レターマン) 2019年 

 こんな企画にも『ブレードランナー』症候群的な画面作りが。「人間とポケモンが共存する街で、薬物でポケモンを狂暴化する実験が進行している」という『ズートピア』みたいなお話。犯罪捜査ものというフォーマットも『ズートピア』と同じ。ハリウッド製の番外編とはいえ、こんなのみんな見たがってるのかなあと疑問は少々。結局は実写化されたピカチュウの愛らしさに尽きる。

 

 

 

マトリックス レザレクションズ』(ラナ・ウォシャウスキー) 2021年 

 大ヒットSFアクションの20数年ぶりの続編。評判悪いようだが、意外や好感度の高い作品だった。前向きなテーマ、20数年を経た登場人物(俳優たち)の佇まい、評判悪いメタ的な設定ですら、やりきった清々しさみたいなものが感じられて好きでした。『ジョン・ウィック』シリーズで凝ったガンファイトを見せるキアヌ・リーヴスが、ここでは何と銃を撃たず、徹底して敵の銃弾をパワーで受け止めるだけという辺りに監督の強い意志を感じます。新しいキャラクターではジェシカ・ヘンウィックがとても良かった。時折若い頃のチョウ・ユンファに見えたりして。

 

 

 

(この項、終了)