Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『スパークス・ブラザーズ』(エドガー・ライト)

 

 

 エドガー・ライト監督の音楽ドキュメンタリー『スパークス・ブラザーズ』鑑賞。スパークス(ロン・メイル、ラッセル・メイル)、バンドメンバーやスパークスのファンであるミュージシャンたちへのインタビュー、アーカイヴ映像、MV、アニメーション等様々な映像を駆使して、50年を超えるスパークスの歩みを一気に振り返ります。自身もスパークスの大ファンだというエドガー・ライト監督の熱い思いが溢れ出し、愉快なパフォーマンスと快テンポの編集で141分はあっという間でした。

 

 それにしても。ユーモアを基調とした、シアトリカルな楽曲を得意とするバンド(10CC、ボンゾ・ドッグ・バンド、デフ・スクール、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツ等々・・・)って好物のはずなのに、何故かスパークスは素通りしていました。もちろん名前は知っていたけれど、アルバムは1枚も聴いた記憶がない。本作に出てくる様々なMVも目にした記憶が無いし、オレはスパークスが存在しない世界線に住んでいたのか・・・。いやまさか。何故なんだろう、覚えていないけど何かがひっかかって意図的に避けていたのか。ともかく、本作を見てちゃんと聴いてみたくなりましたね。70年代よりも最近の楽曲やパフォーマンスの方が面白そうに見えたなあ。それって凄いことではないですか。

 

 スパークスの歴史の中で、映画絡みのエピソードが三つ出てきます。晩年のジャック・タチと企画を進めていたこと(凄い)。残念ながらタチが体調不良の為頓挫。次は日本のコミックの映画化で監督はティム・バートン。こちらはバートンが降板して頓挫。で、次が先日見たレオス・カラックスの『アネット』。本作を見てわかったことは、何と『アネット』はスパークス側の企画だった!スパークスがカラックスに持ち掛けて実現した企画なのだった。どうりでこれまでのカラックスの芸風とは違っていたわけだ。三度目の正直でようやく実現した映画企画なんで、彼らも嬉しかっただろうなあ。ちなみに劇中ではスパークスが手がけたベルイマンを題材とした舞台劇なんてのも紹介されていました。ジャック・タチにバートン、ベルイマン、カラックスって、2人は映画が好きなんだなあ。

 

スパークス・ブラザーズ』 The Sparks Brothers 

監督/エドガー・ライト 出演/スパークス(ロン・メイル、ラッセル・メイル)、ベック、トッド・ラングレン、フリー、アレックス・カプラノス 

2021年 アメリカ/イギリス