Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『エンニオ・モリコーネ、自身を語る』

 

 我が最愛の映画音楽コンポーザー、エンニオ・モリコーネのロング・インタビュー『エンニオ・モリコーネ、自身を語る』(2013年)再読。モリコーネが自身の生い立ちとその音楽、映画界での交友などについて率直に語った一冊。あれだけの質・量をものにした巨匠でありながら、全然偉そうじゃないところがいい。著者はイタリアの映画研究者アントニオ・モンダという人で、仕事熱心なモリコーネへの気配りや、痒いところに手が届く質問が素晴らしい。ファンなら皆気になっているであろうジョン・カーペンターの『物体X』に関する質問は嬉しかった。他には、キューブリックから『時計じかけのオレンジ』のオファーを受けた話なんかも。今となっては『時計じかけのオレンジ』の音楽といえばあのシンセ以外を想像するのは難しいが、もしオファーを受けていたならモリコーネの実験精神が炸裂しただろうと思います。

 

 個人的に最も好きなモリコーネ作品は『夕陽のギャングたち』です。来日公演(『エンニオ・モリコーネ・イン・ジャパン』2004年)で演ってくれたのは嬉しかったなあ。大勢のコーラス隊が、生で「しょん、しょん、しょん、しょん・・・」ですよ。その後天まで届くような美しいソプラノが会場に響き渡り、正直言ってちょっと泣きました。(終演後、同行した友人きゃらはん師に聞いたところによると、彼は『ウエスタン』でちょっと泣いたそうな)

 

 本人はマカロニウエスタンの作曲家と見なされるのを快く思っていないようで、「ウエスタンばかり手がけている訳ではない、確かめたら38本だけだった」などと発言している。38本も!と思うけど、本人にとってみると38本しか、となるのだな。最初期のマカロニウエスタン『赤い砂の決闘』に始まり、セルジオ・レオーネとのコンビ作『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『夕陽のギャングたち』。セルジオ・コルブッチ監督とは『さすらいのガンマン』『殺しが静かにやって来る』『豹/ジャガー』『ガンマン大連合』『J&S/さすらいの逃亡者』、セルジオ・ソリーマ監督とは『復讐のガンマン』『血斗のジャンゴ』、他にもトニーノ・ヴァレリィ監督『ミスター・ノーボディ』等・・・、目の眩むような素晴らしいラインナップです。マカロニファンとしては、タイトルを見ただけですぐにメロディーが思い浮かびます。

 

夕陽のギャングたち

夕陽のギャングたち

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