アメリカ大衆文化の変遷を描くドキュメンタリー番組『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』(全8回)が始まった。社会情勢、風俗、映画や音楽といったカルチャーからアメリカ社会の変遷を読み解こうとする興味深い企画。第1回「アメリカ 理想の50s」(5/7放映)、第2回「アメリカ 闘争の60s」(5/14放送)をチェック。戦後復興と理想のアメリカンライフスタイルが広がる一方で、東西冷戦、赤狩りが暗い影を落とす50年代。ベトナム反戦、公民権運動で揺れる60年代。個人的に50年代~70年代にかけてのアメリカ文化、とりわけ映画については強いこだわりがあるので、興味深く見ました。
表題に掲げられた「サブカルチャー」という言葉について。番組で扱われた映画はほとんどオスカー受賞作やメインストリームの大ヒット作であり(『お熱いのがお好き』『アラバマ物語』『ティファニーで朝食を』『ウエストサイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』『卒業』『真夜中のカーボーイ』等々・・・)、登場するのはマリリン・モンローやオードリー・ヘップバーン、ビートルズ、ボブ・ディラン、モハメド・アリ・・・といった著名人ばかりで、こちらの感覚からするとそれって「メインカルチャー」じゃないのかと。しかるにこの番組における「サブカルチャー」の位置づけとは、文学や芸術やクラシック音楽といった「ハイカルチャー」に対する大衆娯楽という意味での「サブカルチャー」なのかなと思います。「サブカル」と聞いてこちらが想像するものとは違和感がありますが、つまり時代を反映した大ヒット作の中に記された陰りや刻印を表出して見せるという企画なのですね。故に副題「欲望の系譜」なのか。
番組は全8回シリーズで、この後「幻想の70s」「葛藤の80s」「喪失の90s」「不信の2000s」「分断の10s」と続きます。80年代以降はがっつりリアルタイムでその変遷を目の当たりにしてきたので、どのような切り口で描かれるのか楽しみ。