Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ようこそ映画音響の世界へ』(ミッジ・コスティン)

 

 映画における音響演出についてのドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』(2019年)鑑賞。本作の主役は普段は表に出ることのない音響制作のスペシャリストたち。ウォルター・マーチベン・バート、ゲイリー・ライドストロームらが語る興味深いエピソードの数々。またジョージ・ルーカススティーヴン・スピルバーグクリストファー・ノーランデヴィッド・リンチ、バーバラ・ストライサンドら著名な映画監督たちが映画における音響効果の重要性を語ります。

 

 本作ではサイレントからトーキーへ、モノラルからステレオ、ドルビーサラウンド、デジタル化、と映画の歴史(技術の進化)を振り返りながら、映画音響の役割とその効果を解説していきます。この世界は技術の革新とともにあるのだなあということがよくわかります。同時に、昔ながらに映像を見ながら効果音を付けていくアナログな仕事もあったりして面白い。

 

 技術の進歩とともに映画の音響が「迫力」「臨場感」という面で効果を発揮するのは良くわかりますが、それだけでは遊園地のアトラクションと化してゆくわけで、監督が趣向を凝らした映像といかにコラボレーションするのか、音響演出で映像の演出効果を倍増させるのか、といった辺りに個々の音響担当者の個性が出るようです。そういった意味では、本作でメインに取り上げられているウォルター・マーチの功績は偉大だと思わされました。マーチの仕事ぶりは名著『映画もまた編集である―ウォルター・マーチとの対話』で詳細に語られています。

 

 グリフィスのサイレント映画にアフレコしてる場面が出てきましたが、あれはどうなんだろうと思いましたね。すでに映像ですべてを語っているような気もするので、説明過多になるのではないかなあ。そうでもしないと、現在の観客に抵抗なく見せるのは無理なのかな。

 

 内容と関係ない話ですが、最初の内はこれって確か映画音楽のドキュメンタリーだよね、エンニオ・モリコーネ先生は出てくるのかな・・・とか思いながら見てました。そしたら何だか様子が違う。どうやら別の映画(『すばらしき映画音楽たち』)と混同してました。恥ずかしい。

 

 

『ようこそ映画音響の世界へ』 Making Waves:The Art of Cinematic Sound  

監督/ミッジ・コスティン 

出演/ウォルター・マーチベン・バート、ゲイリー・ライドストロームジョージ・ルーカスデヴィッド・リンチスティーヴン・スピルバーグ、バーバラ・ストライサンド、クリストファー・ノーラン

2019年 アメリ