京橋にある国立映画アーカイブにて、久しぶりに大林宣彦監督『時をかける少女』(1983年)を再見。同館の「こども映画館 2022年の夏休み」という企画で、7月29日が第1回『銀河鉄道の夜』、30日が第2回『時をかける少女』。8月の第3回、第4回では活弁と生演奏付きで小津とルビッチのサイレント映画を上映するようです。素晴らしい。親子で映画を見ようという企画なので、小4の娘を連れて見に行きました。『時をかける少女』をスクリーンで見るのは初めてです。しかもフィルム上映(撮影の阪本善尚氏が色調を監修した再タイミング版)なのが嬉しい。
大林監督と言えば、80年代当時「尾道三部作」で絶大な人気がありました。個人的には独特の映像と演出タッチが恥ずかし過ぎてどうにも我慢ならず、苦手な監督でした。でも自分が年を取るに従って次第に大林作品の持つ手作り感覚に好感を持つようになってきて、今では若い頃のような拒否反応を覚えることはなくなりました。
スクリーンで見直してみて、改めて味わい深い映画だなと思いました。尾道の街並みや路地を捉えた映像、主人公が自宅を出て坂を下って深町君の家の脇を通り、ゴロちゃんの実家(お醤油屋)のある家並みを抜けて、学校に至るという道程を何度も何度も繰り返し描くところがとても良かった。昔は恥ずかしくてヤだなあと思って見ていた演出も、今は素直に受け止められるようになり・・・いや、これはやっぱり恥ずかしくて身悶えしましたね。でも、棒読みのお芝居も、「この気持ちは何なの?愛なの?」みたいな直球過ぎる台詞も、有名な「土曜日の実験室~」からのダイブも、倒れていた主人公がむっくり起き上がって歌いだす衝撃的なエンディングも、全てが監督の「これでいいんだ、否、こうでなくちゃダメなんだ!」という確信に満ちていて、妙な迫力が感じられました。娘は素直に楽しんだ様子で、鑑賞後「面白かったよ!」とニコニコしていました。
今回初めて見た子供たちや若いパパさんママさんたちは、昔(80年代)の高校生ってこんな感じだったのか・・・と思ったかもしれません。でも、そんなことないから!本作で描かれている高校生活の様子は、当時見ても「これはないだろうと」と言いたくなるズレっぷりだったのだ。あれはあくまで大林ワールドの高校生活なので誤解無きように。さておき、今回のような親子で名画鑑賞するイベントはとても良いと思うので、次はバスター・キートンとか、ハリーハウゼンのダイナメーションとかどうでしょうかね。
『時をかける少女』
監督/大林宣彦 脚本/剣持亘、大林宣彦 撮影/阪本善尚 音楽/松任谷正隆
出演/原田知世、高柳良一、尾美としのり、上原謙、入江たか子、津田ゆかり、岸部一徳、根岸季衣
1983年 日本