Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『死の同心円』(ジャック・ロンドン) 

 

 ジャック・ロンドン『死の同心円』読了。ホルヘ・ルイス・ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」シリーズ(国書刊行会)の一冊で、ロンドンの短編を5編収録。収録作品は、南海でハリケーンに襲われた島の話『マプヒの家』、極寒の地を舞台にした『生命の掟』と『恥っかき』、不条理ミステリー『死の同心円』、SF風の『影と光』。5編の内、初見は『マプヒの家』『恥っかき』『死の同心円』の3篇。災害で死人続出の『マプヒの家』、極寒の地で捕らえられた主人公が最後の賭けに出る『恥っかき』は両方とも残酷なお話なんだけど、読後の後味は痛快です。一方『死の同心円』の得体のしれぬ怖さ。今回もまた、ジャック・ロンドンの紡ぐ物語のバリエーションの豊かさと迫真の描写力に痺れました。

 

 ボルヘスが編纂した本書は変形サイズで書影も面白い。「バベルの図書館」シリーズ、他にも探して読んでみようかな。