Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『さらば、愛の言葉よ』(ジャン=リュック・ゴダール)

 

 ゴダールの新作をリアルタイムで見たのは『ゴダール・ソシアリスム』(2010年)まで。その後も『さらば、愛の言葉よ』(2014年)、『イメージの本』(2018年)の2本が公開されていましたが、ノーチェックでした。それにしても『ゴダール・ソシアリスム』見たのもう11年も前か。

(当時の記事 https://kinski2011.hatenadiary.org/entry/20110718/1310945444

 

 ゴダール追悼第2弾として、未見だった『さらば、愛の言葉よ』(2014年)鑑賞。Amazonプライムにて。ゴダール84歳の監督作です。お話は、カップルのいざこざが描かれているなというくらいで、何だかさっぱりわかりませんでした・・・。

 

 映像は『ソシアリスム』以上に乱調気味で、斜めに傾いたり逆さまになったり、実相寺ばりに妙なメリハリのある構図(その理由は鑑賞後に判明)だったり・・・。とても84歳の巨匠が撮った映像には見えず、まるでスマホを手にした高校生が「動画撮るって面白いぞ」と好き勝手に撮ったような印象がありました。そこに時折、飛行機雲、波、裸の女性の後ろ姿(お尻)、モニターに映し出される映画、とお馴染みのモチーフが登場、それとお得意の字幕とぶつ切りの音響効果でゴダール印が刻印されているという不思議な映画でした。

 

 ところで、ゴダール作品に繰り返し繰り返し登場する「波」の映像はどんな意味があるのだろう。ヌーヴェルヴァーグ=新しい波というムーブメントで世界に影響を与え、後年『ヌーヴェルヴァーグ』というタイトルの映画を撮ったと思えばそれが文字通り波間に揺れるボートから転落する話だったりするので、ゴダール自身は「それは単に波の映像にすぎないのだよ」とか言いそうな気もしますが。

 

 『さらば、愛の言葉よ』で印象的なのは、お話の合間に登場する犬の映像です。何か物語で重要な役割を背負ってるのかなと深読みしたくなるほどたっぷり撮られていました。あれはゴダールの飼い犬なのかな?それこそスマホを手にした素人がペットの犬猫の動画を撮りまくるようなある種の親密さが感じられて、ゴダール、犬好きなんだろうなと。飛行機雲、波、裸の女性の後ろ姿(お尻)、モニターに映し出される映画等、ゴダール映画お馴染みのモチーフに犬も加わったかもしれません。近いうちに遺作『イメージの本』で確認してみよう。個人的には最近ジャック・ロンドンを続けて読んでいるので、最後に「犬と言えば」という感じでジャック・ロンドンの名前が出てきて感慨深いものがありました。

 

 鑑賞後ネットで調べて仰天したのが、『さらば、愛の言葉よ』って3Dだったのか!ゴダールが3Dを・・・。2Dで見たのでその効果は想像するしかないですが、あの字幕とか犬とか飛び出して見えたのかな。思うに、ゴダール自身、映画の語りにおいて立体である必要性など感じてる訳はないだろうと思います。となれば「体験」としての映画鑑賞を補強したいと考えたのか、あるいは「新しいオモチャを手に入れたぞ」と新鮮な喜びを感じてたのかもしれません。(本編を見る限り、後者のような気がします)

            

『さらば、愛の言葉よ』 ADIEU AU LANGAGE 3D

監督・脚本/ジャン=リュック・ゴダール 撮影/ファブリス・アラーニョ

出演/エロイーズ・ゴデ、カメル・アブデリ、リシャール・シュヴァリエ、ゾエ・ブリュノ   

2014年 フランス