Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『バーナード嬢曰く。』(施川ユウキ)

 

 友人のくにとも師からいただいたコミック、施川ユウキバーナード嬢曰く。』(1巻)読む。学校の図書館にたむろする4人の男女の生態を描くギャグマンガ。ろくに本を読まないのに他人から読書家と思われたい町田さわ子(自称「バーナード嬢=バーナード・ショーのもじり)、さわ子のウォッチャーである遠藤、SFマニアの神林しおり、図書委員で遠藤に気がある長谷川スミカ(シャーロキアン)。読書家、図書館、作家あるあるの細かいネタの数々に笑わせてもらいました。登場する書物はSF多めだけど、純文学から絵本、ケータイ小説、歴史書、実用書など幅広い。かなりニッチな題材のような気がするけど、これって調べたら現在6巻まで出ていて、アニメ化もされてるという人気作だったのね。このおかしさを共有できるお友達がそんなにいるのか。

 

 登場人物の中では、SFファンの神林しおりがツボだった。SFを語りだすと熱くなり「SF語るなら最低千冊、無理でもせめて普通に本屋で買える青背(ハヤカワSF文庫)全部読んでから言え!」と吠える面倒くさいキャラ。しかし彼女の語る「本は読みたいと思った時に読まなくてはならない」とか「ハードSFを読む上でのリテラシー」とか真理を突いていると思ったなあ。特に「本は読みたいと思った時に読まなくてはならない」は、その機会を逃がすと「いつか読もう」から「読まなくてもいいかも」になり、やがて忘れてしまうから、というのは正にその通りである。「ディックが死んで30年だぞ、今更初訳される話が面白いワケないだろ!」には笑った。いや確かに。

 

 主人公さわ子の「カフカの『変身』のストーリー要約=フ(ランツ)・カフカお布団で虫に『変身』」とか、「新しいじゃんけん 銃・病原菌・鉄」にも笑った。

 さわ子が窓から中庭で楽しげに弁当食べてるグループを見下ろしてる場面がある。さわ子が「飢えた犬は肉しか信じない チェーホフ櫻の園』より」とよくわからない引用を披露するギャグ場面。なんだが、実は図書館の常連4人以外の世界があること、そしてその距離感をさりげなく描写した重要な場面のように見えたなあ。