Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『殺しを呼ぶ卵』(ジュリオ・クエスティ)

殺しを呼ぶ卵 [DVD]

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  • ジャン=ルイ・トランティニアン
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 『未来惑星ザルドス』がリストア版リバイバルというニュースに驚いていたら、今度は『殺しを呼ぶ卵』全長版リバイバルというニュースが。何で今あの映画が・・・。「史上唯一の養鶏場サスペンス」という解説には笑った。確かに。

 

 という訳で。『殺しを呼ぶ卵』(1968年)について。以前、イタリアンアクションDVDBOX[倒錯編]収録作品として見ました。アクション、じゃないんですが。監督は怪作マカロニウエスタン『情無用のジャンゴ』のジュリオ・クエスティ、主演は先に亡くなったジャン=リュイ・トランティニャン。共演はエヴァ・オーリン、ジーナ・ロロブリジーダほか。

 

 DVDの解説に曰く「公開当時はゴダールが撮った麻薬患者の映画と呼ばれた」。なんじゃそりゃ。「ゴダールが撮った」って難解ってことか?と思いきや、見たら冒頭が文字通り「ゴダールが撮った」ような映像だったんで仰天した。ゴダールみたいな映像を撮りたいと思ってもなかなかそうはならないというのは経験的によおく知っていますが、本作は正に「ゴダールが撮った」ような映像に仕上がっている。まず単純にそのことに驚いた。この見事なフェイクぶりは同時代のなせる業か。

 

 偽ポップ・ゴダールのタッチで繰り広げられる内容は、神経症的な三角関係のドラマ。ジャッロと呼ぶには血糊が少ないけど、鮮やかな色彩と冴えた編集、全編を覆う妙な雰囲気だけで充分楽しめる。ブルーノ・マデルナによる武満徹ばりの不穏な現代音楽がまた良い。エヴァ・オーリン、ジーナ・ロロブリジーダの二人の美女が輝き、怪しげなジャン=リュイ・トランティニャンが彷徨する。ニヤニヤ楽しみながら見ていたら、終盤に至ってギョっとするようなグロテスクなイメージが噴出。文字通り殺しを呼ぶ卵の話であったことには感動を覚えます。「養鶏場サスペンス」(笑)、タイトルに偽りなしの怪作でした。リバイバルも行ってみたい。スクリーンであの妙な世界を再体験したい。

 

 

『殺しを呼ぶ卵』 LA MORTE HA FATTO L'UOVO     

監督/ジュリオ・クエスティ 脚本/ジュリオ・クエスティ、フランコ・アルカッリ 撮影/ダリオ・ディ・パルマ 音楽/ブルーノ・マデルナ

出演/ジャン=ルイ・トランティニャンジーナ・ロロブリジーダエヴァ・オーリン、レナート・ロマーノ  

1968年 イタリア