Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『WANDA』(バーバラ・ローデン) 

 快晴の文化の日、諸々の調整が上手く言ったので映画館へ。墨田区菊川に出来たミニシアター「Stranger」。ここはオープニングがゴダール特集で気合入ってるなあと思ってたら、今回は『断絶』『WANDA』のカップリング。アメリカン・ニューシネマ時代のロードムービー、かつアメリカン・ニューシネマとは似て異なる肌触りを持つ2本です。

 

 まずはモンテ・ヘルマン監督『断絶』(1971年)。何度も見ているけど劇場は初めて。主人公たちの長い長いドライブに付き合った後の衝撃的なラストショットは、スクリーンで見てこそだと思っていたので嬉しかった。改めて見直して、人物(と車)の画面への出し入れに細心の注意が払われてることに感心。そしてウォーレン・オーツの魅力。ヘルマン作品常連のオーツの人懐っこい存在感がとても良い。

 

 続いてバーバラ・ローデン監督・脚本・主演『WANDA』(1970年)鑑賞。離婚し、親権は元夫に渡し、仕事を失い、置き引きに遭ってなけなしのお金を奪われる。すべてを失った女性ワンダは、犯罪者の男と行動を共にする内に、銀行強盗の片棒を担ぐことになる・・・。時代的にはアメリカンニューシネマの頃、それら作品が放つ湿った挫折感とは似て異なる手触り。自己肯定感が恐ろしく低く、成り行き任せで流されていく女の生き方。徹底的に受け身でよるべなき女の魂の彷徨が、ざらついた剥き出しの映像で描かれています。採掘場を歩く白い服、時折画面にぬっと出現する赤、ラジコンの飛行機に叫ぶ男、地下墓地、ワンダが虚ろな表情で煙草を吸う姿…。予想していたよりもずっとシビアな映画でした。       

 

 あんまり詳しくないのでこれという作品を上げることが出来ませんが、もしかするとにっかつロマンポルノとかピンク映画にはこれに近い感覚の映画があるのではないかと思いました。映画の規模感、女性が主人公、途中で犯罪映画に変わってしまう感じも、こんな映画ありそうだなと。もちろん、それら男性観客の目線で作られた映画と、女性目線で作られた『WANDA』では作り手の立ち位置や成り立ちが全く違うけれど。その辺、考察している方はいないのかな。