Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(テリー・ギリアム)

 

 アマプラにて、テリー・ギリアム監督『テリー・ギリアムドン・キホーテ』(2018年)鑑賞。冒頭に「AND NOW」と字幕が入り、本作がやっと完成・公開にこぎ着けたことが説明されます。本作はギリアムの念願の企画であり、度重なる失敗で知られています。Wikipediaには「19年間の間に9回映画化に挑戦してその都度失敗した」と書かれていました。『ロスト・イン・ラマンチャ』は、ジャン・ロシュフォールジョニー・デップヴァネッサ・パラディで進行していた初期の映画化のメイキング・ドキュメンタリー。EDクレジットには「ジャン・ロシュフォールジョン・ハートに捧ぐ」と献辞が出ます。ジョン・ハートも主演候補だったのですね。さておき「AND NOW」の字幕には否応なしにモンティ・パイソンを思い出してしまった。

 

 CM監督のトビー(アダム・ドライヴァー)は、学生時代に撮影したドン・キホーテ映画のロケ地の村を訪れる。ドン・キホーテ役を演じた村の靴職人ハビエル(ジョナサン・プライス)は、自身をドン・キホーテと信じ込み村はずれの小屋に監禁されていた。食堂の娘アンヘリカは女優を夢見て村を捨て都会へ飛び出すなど、映画が村に遺恨を残していたことを知る・・・。

 

 本編は自分をドン・キホーテと信じ込む老人とサンチョ・パンサの役割を演じる羽目になった主人公の珍道中。お話の背後には映画の作り手の傲慢さ、映画製作が人を不幸にするという負の面があるのでなかなかに苦いドラマが展開します。自らが信じた物語(夢)が真実になるドラマは、これまでの作品と共通していますが、ギリアムの大きな魅力だった破天荒な映像の面白さに欠ける気がします。太った巨人が棍棒持って迫って来るなんて場面はギリアムの大きな見せ場のはずですが、『バンデットQ』や『バロン』の同様の場面に比べて何だか味気ない。予算のせいなのか、手作り特撮の味わいが無いCGのせいなのか・・・・。そこがとても残念でした。

 

 

テリー・ギリアムドン・キホーテ』 The Man Who Killed Don Quixote

監督/テリー・ギリアム 脚本/トニー・グリソーニ、テリー・ギリアム 撮影/ニコラ・ペコリーニ 音楽/ロケ・バニョス

出演/ジョナサン・プライスアダム・ドライバージョアナ・ヒベイロ、オルガ・キュリレンコステラン・スカルスガルド、オスカル・ハエナーダ、ジョルディ・モリャ

2018年 イギリス/スペイン/フランス/ポルトガル/ベルギー