Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『グリーン・ナイト』(デヴィッド・ロウリー) 

 

 TOHOシネマズシャンテにて、デヴィッド・ロウリー監督『グリーン・ナイト』(2021年)鑑賞。アーサー王の甥であるダメ騎士ガウェインの冒険を描くファンタジー。剣と魔法の世界を舞台にしているとはいえ、主人公の旅は全くヒロイックなものではなくて、ボコられ、逃げ回り、飢え、選択の機会には逡巡し、そもそもが「首を切り落とされに行く」というクエストが辛すぎる。荒涼とした世界を旅し、緑の騎士と対峙するクライマックスでこの期に及んでなおビビりまくるのがいい。主人公を演じるデーヴ・パテールのユーモラスな存在感がお話の陰惨な印象を和らげていました。二役を演じたアリシア・ヴィキャンデルが魅力的。曇天が基調の暗めの映像、繊細極まりない音響効果は、没入できる劇場ならではのお楽しみでありました。

 

 『グリーン・ナイト』は何故かコメディだと思い込んでいて、予想と全く違った映画で戸惑いました。宣材に描かれたキツネのせいか、主演デーヴ・パテールの顔つきのせいか。もしくは、円卓の騎士と言えば反射的にモンティ・パイソンホーリー・グレイル』を思い出すのでそのせいかな。前の席のサラリーマンは途中で席を立って戻らなかった。後ろの席ではしゃいでいたカップル(大学の先輩後輩らしい)は鑑賞後死んだような表情で黙り込んでいたが大丈夫か。