Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『第十一号監房の暴動』『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(ドン・シーゲル) 

 

 菊川のミニシアター、Strangerで好企画「ぶっ放せ!ドン・シーゲル セレクション」がスタート。まさかシーゲル作品をスクリーンで見られるとは思っていなかったので嬉しい。1/20~2/9は50年代から60年代、2/10~3/2は60年代から70年代の作品を上映。全8作品。

 

 まずは『第十一号監房の暴動』(1954年)。待遇改善を求め暴動を起こす囚人たちと刑務所や警察の攻防を描く力強い作品。武闘派、穏健派それぞれの囚人たち、刑務所所長、その上司、知事、それぞれの立場でぶつかり合う登場人物たちを的確に描き分けるシーゲル演出。静まり返った刑務所の廊下(または中庭、食堂)が、次の瞬間には囚人たちの怒号と暴力が飛び交うカオスと化す様はアクション派の面目躍如。苦い勝利を手に監房の廊下をゆっくりと歩き去る主人公の後ろ姿には、後年の『ダーティハリー』1作目のラストを想起した。

 主人公である囚人のリーダーを演じるのはネヴィル・ブランド。ブランドといえば、どうも『マッドボンバー』や『悪魔の沼』の荒んだ風貌を連想してしまうが、本作ではまだ若々しく、あんな凛々しい姿は初めて見たような気がするなあ。いかつい顔と長身と漲るエネルギーが、最近の日本の俳優で言えば鈴木亮平のような雰囲気だった。

 刑務所での暴動が相次ぐ様子を伝える冒頭のニュースリールとナレーションからして、もともとは社会派の企画だったのかなこれは。本編にはそういった生硬さは一切ない。        

 

 続いて『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956年)。ジャック・フィニイの『盗まれた街』を映画化した侵略SFの古典。久々に再見したが、温室で複製が育っている場面、サヤがトラックに続々積み込まれている場面等の怖さ(というか気色悪さ)は少しも衰えていなかった。診療所から見下ろすロータリーに集う人々の歩きだけで、ただならぬ状況を示すシーゲル演出。

 同原作の映画化は、フィリップ・カウフマン版(1978年)、アベルフェラーラ版(1993年)、オリヴァー・ヒルシュビーゲル版(2007年)もそれぞれ個性的で悪くないけれど、緊迫感という意味ではシーゲル版が一番だと思う。

 

 Strangerのシーゲル特集は3/2まで続く。レイトショーをやっていないのでリーマンとしては通うのがなかなか難しいけど、何とかして残りの作品も見に行きたいな。