Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『パトニー・スウォープ』(ロバート・ダウニー) 

パトニー・スウォープ [Blu-ray]

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  • アーノルド・ジョンソン
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 ロバート・ダウニー監督『パトニー・スウォープ』(1969年)鑑賞。早稲田松竹にて。これ見逃してしまうかと思ってたから再映ありがたい。

 

 名門広告会社の新社長に選任された黒人役員パトニー・スウォープが、奇抜な広告キャンペーンを展開し業界を撹乱する。面白い風刺コメディであり、白人監督によるブラックムービーでもある。製作は『スウィート・スウィートバック』『黒いジャガー』に先駆けた1969年。白人監督によるブラックムービーとしては、ジャック・ヒルラリー・コーエンより早いはず。ブラックムービーには疎いので、本作がこのジャンルでどのように位置づけられているのか気になるところ。      

 

 監督はロバート・ダウニー。俳優のロバート・ダウニー・ジュニアの父であり、先鋭的なインディペンデント映画製作で知られる人物だったとのこと。そう聞くと息子のフリーダムな雰囲気も何となく納得できる。本作も本編モノクロ、CMはカラーの凝った画面構成や、白人黒人が逆転した企業の様相を描きその特色がうかがえる。ポール・トーマス・アンダーソンはダウニーの影響を公言しており、近作『リコリス・ピザ』で献辞を捧げていた。また『ブギーナイツ』にはダウニーをキャスティング(ダーク・ディグラーにデモテープを渡すことを拒否するプロデューサー役)、爆竹が出てくるなどオマージュを捧げていた。

 

 『パトニー・スウォープ』の解説を読むと、主演アーノルド・ジョンソンの声は監督ダウニーが吹き替えているとのこと。吹き替えた理由は定かではないが、それを読んで、監督の息子ダウニーJr.が役作りに熱心なあまり黒人になってしまう俳優を演じた『トロピック・サンダー』を思い出した。