Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(ジュゼッペ・トルナトーレ) 

 

 映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの業績を辿るドキュメンタリー『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(2021年)鑑賞。TOHOシネマズシャンテにて。長年のモリコーネ・ファンなのでこれは正に至福の157分でありました。

 

 デビュー作からマカロニウエスタン、ジャッロ、錚々たる名監督たち(パゾリーニベルトルッチ、レオーネ・・・)らの作品、またサントラで音楽だけは知ってるが見たことのない日本未公開作品(『ある夕食のテーブル』!)の映像がふんだんに登場。超名曲『1900年』『天国の日々』には泣きそうになりました。各界の著名人によるリスペクトに溢れたコメント、本人インタビューでの含蓄のある言葉のひとつひとつからその才能と人柄が伝わってきます。脚本から状況把握し、映像と音楽の最適な組み合わせを監督に提案する様子(最初はモリコーネの提案に難色を示す監督たちも結果的には納得する)には、モリコーネの突出した才能が伝わってきます。

 

 クラシック界の師匠への複雑な思い、ハリウッド(アカデミー賞)での扱いなどに苦悩する姿、出来上がった曲は最初に奥さんに聴かせて認められた曲だけを映画に使ったというおしどり夫婦ぶり、名コンビ・セルジオ・レオーネとは小学校の同級生だった有名なエピソード、事前に録音された曲を流しながら撮影したというエピソード(実際に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のメイキング映像も)、等々・・・。ファンにはこたえられないエピソードの数々が、関係者のインタビュー、豊富なフッテージを交えて描かれます。歌手エッダ、口笛のアレサンドロ・アレッサンドローニのお姿も。イタリアン・ポップスのアレンジャー、また実験音楽家としての側面もきちんと押さえられているのが嬉しいところでした。

 

 モリコーネの偉業を振り返るには157分でも短いくらい。モリコーネ作品の名曲名場面集だけで5時間でも6時間でもいけそう。もう一回見たいな。