Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ビーチレッド戦記』(コーネル・ワイルド)

 

 コーネル・ワイルド監督『ビーチレッド戦記』(1967年)鑑賞。『裸のジャングル』で意欲的な演出を見せたワイルドが製作・監督・主演、変名で脚本も手がけた戦争映画。本作も期待に違わぬ見ごたえのある作品だった。出演リップ・トーン、パトリック・ウルフ、ジーン・ウォーレス、ハイメ・サンチェス、バー・デベニング、デイル・イシモト、小山源喜、羽佐間道夫、寄山弘ほか。

 

 『ビーチレッド戦記』は、米軍・日本軍双方を平等に描きイーストウッド硫黄島二部作と比較されている。実際見てみると、想起したのは硫黄島二部作とは別の映画だった。前線の兵士たちが思索に耽る姿(個々のモノローグが入るスタイル)、武器を置き花を愛でる兵士など、これは明らかにテレンス・マリックシン・レッド・ライン』の原型ではないか。伝説の映画監督だったマリックの復活にハリウッドスター俳優が終結した大作『シン・レッド・ライン』に比べると、本作は出演者も予算も段違いに貧しい。戦闘場面にはニュースリールが多用されてる。しかし画面の貧しさを超えて、戦場で家族や女性のことを想い死んでゆく兵士たちの切実な感情はきちんと伝わってくる。『プライベート・ライアン』ばりの人体破壊もちゃんと描かれる。ベトナム戦争真っ最中の67年に本作のような厭戦的作品を作るワイルドの気骨よ。OPとEDに流れる哀しい歌、バックのイラストも印象に残る。