Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ラ・ジュテ』(クリス・マルケル)

 

 少し前になりますが、アマプラにてクリス・マルケル監督『ラ・ジュテ』(1962年)鑑賞。久々の再見となりました。出演エレーヌ・シャトラン、ジャック・ルドー、ダフォ・アニシほか。

 

 『ラ・ジュテ』は全編がスチールの静止画像で構成された、映像詩とでも呼ぶべき美しい短編SF。シンプル極まりない仕掛けだが、イメージの喚起力が半端じゃない。少年時代の記憶に執着し、記憶の中の女性に会うため時間旅行を繰り返す男。未来人との邂逅。時間が揺らぐような感覚がきちんと伝わって来て、このようなやりかたでもSF映画が出来るのだなと改めて感動した。有名な「一瞬女性が動く」部分の鮮やかさ。

 

 本作を基にしたSF大作がテリー・ギリアムの『12モンキーズ』。改めて見直すと、全ての要素がすでにここにあるのだった。「奇妙な落書き」としか出てこない部分を膨らませて『12モンキーズ』の物語を作り出したデヴィッド・ウェッブ・ピープルズの脚色はなかなかのものだった。

 

 本作について初めて知ったのは、昔読んだアニメ雑誌。『アニメージュ』だったかな。大森一樹押井守の対談という面白い企画があって、その中で押井守がこの映画に影響を受けてスチールを撮りまくったと発言していた。大森一樹押井守は同世代で、映研出身同士。『すかんぴんウォーク』と『うる星やつら2/ビューティフルドリーマー』が併映だったことをうけての対談で、意気投合していた。映画を作る前に会っていたらゴダールとマルケルの二本立てみたいになって東宝が怒っただろうとか言ってた。