Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『さらば冬のかもめ』『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(ハル・アシュビー)

 

 

 早稲田松竹にて、ハル・アシュビー特集。『さらば冬のかもめ』『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』二本立てと、レイトショーで『ハロルドとモード』という感涙のラインナップ。アルトマン傑作選にアシュビー特集って今年いったい何年よ?と言いたくなるけど、嬉しいので行ってきました。

 

 まずは『さらば冬のかもめ』(1973年)。学生時代以来の再見で、劇場鑑賞は初めて。久しぶりなんで細部はすっかり忘れてた。日蓮宗のお題目のくだりとか、ナンシー・アレン出てることとか。

 

 慈善用募金箱から金を盗もうとして捕まった新兵と、彼を刑務所まで護送することになった下士官2人の珍道中。これが非常にビターな味わいで、個人的にはこれぞアメリカン・ニューシネマという印象がある。脚本は『チャイナタウン』のロバート・タウン

 

 大きな子供みたいな新兵ランディ・クエイド。馬鹿騒ぎにいまひとつ乗り切れない生真面目さが漂うオーティス・ヤング。護送の任務を楽しくやり過ごそうと段取る陽気なジャック・ニコルソン。3人の会話と関係性の変化こそが映画の見どころだ。3人が友情を深めてからの終盤の展開が苦い。

 

 杓子定規なバーテンダーや嫌な上官をやり込めたところで一時的な気晴らしにしかならない。軍隊方式に嫌気が差しているのに、男たちは結局は任務を果たさざるを得ない。誰もいない冬の公園でソーセージ焼いて食べる場面の侘しさ。不貞腐れた表情のニコルソン。白い息を吐き、震えながら飲む缶ビール。

 

 とても良かったので、本作の続編の映画化『30年後の同窓会』(リチャード・リンクレイター)も見てみようかな。

 

 

 

 続いて、『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(1976年)鑑賞。こちらは初見。

アメリカの伝説的なフォークシンガー、ウディ・ガスリーの自伝を映画化。映画の前半たっぷり使って描かれる不況と厳しい環境(砂嵐!)で荒んだ1930年代テキサス州の様子。ホーボーとなった主人公の放浪生活。名手ハスケル・ウェクスラーの捉えた埃っぽい風景、人々の顔つきが大きな見どころだ。

 

 映画の後半はいよいよミュージシャンとしての活動が描かれる。ウディ・ガスリーの楽曲をちゃんと聴いたことが無いので、どこまで再現できているのかは分からないが、ウディ役のデヴィッド・キャラダインは雰囲気出てたんじゃないかな。逆境にあってもマイペースを貫く男の逞しさが滲み出ている。何より埃っぽい風景がよく似合う。

 

 脇役で『さらば冬のかもめ』の新兵ランディ・クエイドの姿も。『ブレードランナー』の出演者が3人(M・エメット・ウォルシュ、ブライオン・ジェームズジェームズ・ホン)が出ていた。