Amazonプライムにて、ジャン・ルノワール監督『ピクニック』(1936年)鑑賞。田舎にやって来たパリの商人一家。彼らが自然の中で過ごすひとときを描く伸びやかな名篇。モーパッサン原作による40分の中編で、冒頭に故あって未完成の作品である旨の字幕が出る。
様々な表情を見せる川の流れ、木漏れ日の中で語らう母娘の優しい雰囲気、無心にブランコをこぐ娘の晴れやかな表情、雨の予感など、わずか40分の間に映画的な美しい瞬間が幾度も訪れる名編。ラストに至り、娘が流した涙の意味(馬鹿な婚約者との結婚を前にした葛藤)、そんな娘を思いやる母親の言動、丸顔の男の純情がじんわり伝わってくるのが良かった。
ひとつ気になったのが、ナンパ目的で母娘に近づく男2人がやけに生々しく描かれていることだった。これには少々落ち着かない気分にさせられた。母娘に注ぐ好色な視線、娘が茂みに連れ込まれて押し倒される場面、耳の遠いおばあちゃんはどうなったんだよ、とか。何も酷いことは起きないだろうと分かってるのに、ついホラー映画脳が稼働してしまって妙な緊張感を覚えながら見ていた。そんなの自分だけかな。
鑑賞後解説を読んだら、本作が戦禍を逃れて上映に至る経緯(フランスで正式公開されたのは1946年)、主演シルヴィア・バタイユは『眼球譚』のバタイユの奥さんだったとか、助監督にジャック・ベッケル、ルキノ・ヴィスコンティが付いていたりと、色々と凄い作品なのだった。