トッド・ヘインズ監督『メイ・ディセンバー ゆれる真実』鑑賞。
36歳の女性とアルバイト先で知り合った13歳の少年の恋愛スキャンダル事件。実刑を受けた女性は少年との子供を獄中で出産し、刑期を終えてふたりは結婚・・・。23年後、この事件が映画化されることになり、主演女優エリザベス(ナタリー・ポートマン)が事件の当事者グレイシー(ジュリアン・ムーア)をリサーチにやって来る。関係者を取材する中で次第に事件の真相が明らかになってゆくが・・・。
当事者の真実と、他人から見て納得できるように組み立てられた真実(物語)の関係性をスリリングに描いた傑作。実話を映画化しようとする設定が入れ子になっているのが面白い。ナタリー・ポートマンを探偵役に過去の事件を辿るミステリーとしても十分楽しめる。
底の見えない怪物グレイシー(ジュリアン・ムーア)と、女優という因果な商売を体現するエリザベス(ナタリー・ポートマン)の駆け引きはホラー映画さながらの恐ろしさ。並んでお化粧する場面など心底震え上がった。女性2人のドラマに、夫ジョー(チャールズ・メルトン)の存在が救いをもたらしているようだ。ジョーの秘めた情熱(蝶)、事の重大さに今更気がついたような純朴さ、息子の卒業を前に取り乱す滑稽な場面が痛々しい。
冒頭から場違いな位ドラマティックな音楽が鳴り響き不穏な雰囲気を盛り上げていた。音楽にミシェル・ルグランのクレジットがあって何で?と思ったら、ジョセフ・ロージー『恋』の曲を転用しているとのことだ。