短編映画鑑賞からの流れで、自然と(?)ロジャー・コーマンに行きついた。50年代~60年代初頭の作品は上映時間70分程度でサクッと鑑賞できて、内容も別に難しくないから字幕なしでも支障が無いのだ。
『蜂女の恐怖』(1960年)
業績不振にあえぐ化粧品メーカーの社長(コーマン作品常連のスーザン・キャボット)が、スズメバチのエキスから作った美容液を注射すると怪物化し、夜な夜な人間の血を吸う蜂女に・・・。
『蠅男の恐怖』のヒットに対抗して、向こうが蠅ならこちらは蜂でいこうとコーマン。オリジナルポスターは人間の顔をした巨大な蜂が人間を襲う姿が描かれているが、これはコーマン商法の超誇大広告!実際は等身大の怪物で、まるでショッカーの怪人ハチ女だ。スケールは小さいが、手堅い演出で見せる。蜂女が血を吸うだけでなく捕食していることを示唆する辺りはなかなか怖い。

『ごろつき酒場』(1957年)
ロックンロール映画の流行にAIPから依頼を受けて製作した作品。原題ROCK ALL NIGHTが何で『ごろつき酒場』に!?と思うけど、後半は邦題通りの展開になる。脚本はチャールズ・B・グリフィス。
冒頭で人気グループのプラターズが2曲たっぷり披露する見せ場がある。本作はどうやらプラターズのスケジュールありきで無理やりでっち上げられた企画のようで、彼らの歌が終わると、主人公と酔客の喧嘩騒ぎ、歌手志望の女の子の話、ギャングの立てこもり事件、と脈絡のない展開に困惑させられる。
最後はコーマン作品常連のディック・ミラーが活躍して映画を何となく締め括る。ミラーといえば『血のバケツ』のビートニク殺人鬼、『リトルショップ・オブ・ホラーズ』の花を食べる男など珍妙な役柄が多いけど、本作では珍しくニヒルなヒーロー役で格好良いです。

『衛星戦争』(1958年)
エイリアンが人類の宇宙進出を邪魔するお話で、50年代B級SF映画ならではのレトロな雰囲気が楽しい。背景には当時の加熱した米ソの宇宙開発競争があって、スプートニク打ち上げの話題がホットなうちに速攻で製作されたのだという。
出演はディック・ミラー、スーザン・キャボット、リチャード・デヴォン。先日見たコーマン製作の戦争映画『Battle of Blood Island』に主演していたデヴォンは、濃いルックスと長身を生かしてエイリアンに憑依された上司を怪演。エイリアンが使う分身の術は素朴極まりない見せ場だけど、決着の付け方に(ほんのちょっと)ヒネリがあって面白かった。

コーマン自身も管制官の役で出演。これがなかなかの男前だった。

『Sorority Girl』(1957年)
女子大の学生寮を舞台に、陰湿な人現関係を描くコーマンにしては異色の女性ドラマ。突然の平手打ちやクリケットの板を使ったお仕置きなど、ギョッとする見せ場が随所に。この題材がコーマン自身から出たとは思えないので、当時このような学園ドラマの流行があったのだろうか。
主演はまたしてもスーザン・キャボット。高飛車なお嬢様の役がピッタリハマっていた。
本作はタイトルバックのアニメーションが無茶苦茶に不穏な雰囲気で目を惹かれる。劇中でスーザン・キャボットの部屋の壁に飾ってある絵画がチャールズ・ミンガス『直立猿人』のジャケットに似てるなと思って、鑑賞後確認したら実際は全く似てなくてがっかりした。ジャケットを描いたのはフリオ・デ・ディエゴというスペイン出身の画家で、画業をチェックしてみたら、『Sorority Girl』のタイトルバックに酷似した雰囲気の作品に出くわした。偶然かもしれないが、もしかしてタイトルデザイナー(ビル・マーティン)が意識していたのかもしれない。

『レッド・バロン』(1971年)
第一次世界大戦で実在したドイツ空軍の撃墜王マンフレート・フォン・リヒトホーフェン(ジョン・フィリップ・ロー)、通称レッド・バロンの半生を描く戦争映画。独英両空軍の撃墜王の対決を通じて、戦場における騎士道精神の終焉と手段を選ばぬ大量虐殺の近代戦争への移行を描く力作だった。
50年代~60年代のゲテモノ映画とは全く違った端正なタッチに驚く。空中戦の場面は台詞無し、状況説明無し、何なら戦争映画っぽい勇ましい劇伴も無し。全編愁嘆場は一切無し。非情極まりない結末には痺れた。かと思えば、複葉機と野生の馬の並走、雲間にかかる虹などハッとする見せ場もある。うーん、これぞコーマン演出の真髄か。
劇中、虹の七色に塗装した戦闘機を「空飛ぶサーカスか!」と言う台詞が出てくる。Flying Circusといえば、モンティ・パイソン!何とその番組名の語源は、レッド・バロン部隊の実話だったというから衝撃だった。
『デススポーツ』(1978年)
こちらはコーマン製作、デヴィッド・キャラダイン主演のSFアクション。監督は快作『ゲット・クレイジー』『ロックンロール・ハイスクール』のアラン・アーカッシュとヘンリー・スソ。映画データベースでは時々コーマン監督作品とされている場合があったりして紛らわしい。でも御大がかなり関与しているのは間違いないところだろう。
独裁者が圧政を敷く未来社会、人間狩りで集められた人々が死のゲームに強制参加させられる。同じくコーマン製作の『デス・レース2000年』の続編的趣向で、見せ場は剣劇とモトクロス的なバイクアクションのミックス。つまらなくはないんだけど、『デス・レース』ほど盛り上がらないのは、ゲームに参加するプレイヤー、ゲームに熱狂する大衆の顔が見えないからかもしれない。『デス・レース』に比べると毒気も薄くて、そこは残念だった。
という訳で、今回は何だかスーザン・キャボット&ディック・ミラー特集みたいになってしまった。コーマン作品はこのまま連続鑑賞しコンプリートしたいところだけど、まだまだたくさんあるのだ。ポー原作の怪奇映画も見直したいな。

ディック・ミラー

スーザン・キャボット