Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『クロノロジー〜グレイト・ライヴ1975-2002』(トーキング・ヘッズ)


 トーキング・ヘッズの貴重なライヴ映像を集めたDVD『クロノロジー〜グレイト・ライヴ1975-2002』がリリースされた。再結成したとかメンバーが死んだとかいう訳でも無いし、どういうタイミングなのかなあと思えば、今年(2011年)はヘッズが解散して20年目の年なのであった。そうか、もうそんなに経つのか。


 まだ3人組だったデビュー当時から、2002年のロックン・ロール・ホール・オブ・フェイムにおける一度だけの再結成ライヴまで、ライヴ映像で振り返るトーキング・ヘッズの歴史。彼らの成長/音楽性の変遷が手に取るように伝わってくる素晴らしいDVDだ。


 何より嬉しかったのは、最初期の映像がふんだんに収録されていること。ヘッズはMTVや映画製作に積極的なアプローチを行なっていたので、80年代以降の映像はたくさん見た事があるけれど、さすがに70年代の映像は超貴重だ。アルバム・デビュー前のニューヨークCBGBでのライヴ映像(1975年)など数曲が収録されている。神経質そうなか細い声のデヴィッド・バーン、まだほっそりと痩せているクリス・フランツ、緊張した面持ちのティナ・ウェイマス(可愛い)。黒人ミュージシャンやエイドリアン・ブリューを招き入れ、映画『ストップ・メイキング・センス』に発展する大編成のライヴや、1991年に解散後、ロックン・ロール・ホール・オブ・フェイム(「ロックの殿堂」)入りを祝賀しての再結成ライヴまで、全18曲を楽しめる。歌詞の日本語字幕が出るのも嬉しかったなあ。ムーンライダーズ全アルバム・レビューの後は、トーキング・ヘッズに突入したいくらい盛り上がってしまった。


 本編映像だけでも大満足の内容なんだけど、ボーナス映像としてイギリスのTV番組「サウス・バンク・ショウ」(1979年)、1978年デヴィッド・バーンへのインタビュー、さらにはメンバー全員によるオーディオ・コメンタリーも収録、と盛りだくさん。さらに、ブックレットには何と伝説の評論家・レスター・バングスによる解説(『フィア・オブ・ミュージック』評)が掲載されている。(レスター・バンクスとはキャメロン・クロウの名作『あの頃、ペニー・レインと』でフィリップ・シーモア・ホフマンが演じていた人物だ)ボーナス映像や解説はこれからじっくり楽しみたい。