ルシア・ベルリンの短編集『楽園の夕べ ルシア・ベルリン作品集』読了。先に読んだ『掃除婦のための手引書』『すべての月、すべての年』は強烈に響くものがあったので、迷わず手に取った。先の二冊同様、本書に収録された短編もまた、どれも真っ直ぐ突き刺さってくる素晴らしい作品ばかりだった。
少女時代の冒険を描く『オルゴールつき化粧ボックス』『夏のどこかで』『旅程表』等も良いが、年齢を経ての実感が込められた『ルーブルで迷子』『妻たち』等が実に沁みる。特に最後の『新月』はあまりにも美しくて、繰り返し読んでしまった。長男マークによる解説がまた感動的だった。曰く『物語こそがすべて』だと。
『すべての月、すべての年』収録の『野良犬』には、アンジー・ディキンソン主演のSF映画『恐怖のSF戦争』の撮影風景が描かれていた。本短編集の表題作には、何とジョン・ヒューストン監督『イグアナの夜』撮影隊のエピソードが描かれている!これには驚いた。監督ヒューストンはもちろん、リチャード・バートンとリズ、エヴァ・ガードナーやスー・リオンら俳優たちも登場。あの珍妙なビーチボーイたちも!
今の自分がちょっと弱っているせいか、『日干しレンガのブリキ屋根の家』等、上手く受け止めきれなかった作品もある。元気になったらまた読み返してみたいなと思う。