アンドレイ・タルコフスキー監督『ノスタルジア』(1983年)鑑賞。北千住シネマブルースタジオにて。仕事明けの疲れた身体でタルコフスキー鑑賞は危険な賭けだなと思いつつ、約2ヶ月ぶりの映画館なので何か濃厚な作品を見たくてこちらをセレクト。
異国イタリアを彷徨う詩人の脳裏に去来する故郷の風景。ゆっくりとした横移動と奥行きのある縦構図が織りなす独特の映像感覚を堪能した。世界の終わりを憂いて家族を幽閉した男のエピソードもインパクト充分。実はタルコフスキーって表現が詩的(私的)にすぎて苦手な監督なんだけど、本作はとても好きだった。故郷喪失者の心象風景という部分にこちらも思い入れるところがあり、そこから上手くノレたというのが大きいかもしれない。寝落ちせず無事鑑賞出来た。
塞ぎ込んだ中年男、横たわる女性、霧に煙る自然、水の滴る廃屋、鏡、犬、炎とお馴染みのモチーフが要所に散りばめられている。特に「水」は雨、水溜り、雪、ワイン、さらに鼻血と手が込んでる。また、耳を澄ますと何処かの犬の吠え声が遠くに聞こえるあの感じは監督の原風景のひとつなのかなと思う。
今回はフィルム上映。といっても4K修復版ではなくて、元のバージョンだった。故郷の場面などセピア調の色彩がとても印象的。確かAmazonプライムに入ってたなと思い、帰宅後確認したところ、全く違うクリアな画質で冷たい印象を受けた。故郷の場面はモノクロ。こちらが元々監督が意図していた色調なのだろうか。
北千住シネマブルースタジオは今回もほぼ貸し切り状態だった。お客さん自分入れて3人でしたよ‥‥。『EAST MEETS WEST』の貸し切り体験はちょっとしたトラウマで、喜八やタルコフスキーほどの人気監督でもこれかと落ち込みますね。ブルースタジオに行くたび書いてるけど、基本フィルム上映だし、入場料千円だし、もったいない。次回上映はルイ・マル『死刑台のエレベーター』(ニュープリント、フィルム上映)とのこと。皆様、ブルースタジオ行きましょう!