Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

4月に見た映画

 あれこれ忙しくて、3月の末頃からブログの更新が滞り気味だ。更新が途切れている間に見た映画の感想をまとめて書き記しておきたい。この期間に劇場で鑑賞したのは『ドラゴン・タトゥーの女』のみ。後はTV放映されたものか、DVDによるものだ。


ドラゴン・タトゥーの女』(デヴィッド・フィンチャー 2011年 アメリカ 
 フィンチャーはあまり好きな監督ではなかったのだけれど、近年は『ゾディアック』『ソーシャル・ネットワーク』と秀作が続き、改めて注目している。本作の演出も実に力強い。「虐げられた女性の逆襲」というテーマもきちんと筋が通っている。ミステリー映画としては、タイプキャストの難点というか、顔を見ただけで「こいつが真犯人に違いない」と予想が付いてしまうのが弱点か。ドラゴン・タトゥーの女を演じるルーニー・マーラには萌えたなあ。オレって痩身の女性が好きなんだなあと改めて思った事であるよ。



『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(アダム・マッケイ) 2010年 アメリカ 
 やる気が空回る熱血刑事(マーク・ウォールバーグ)とデスクワーク好きの内向刑事(ウィル・フェレル)のコンビが巻き起こす騒動を描くコメディ映画。単なる馬鹿映画と思いきや、後半の急展開には度肝抜かれること必至。うだつの上がらないその他大勢(THE OTHER GUYS)が主役に躍り出る逆転劇であり、かつリーマン・ショック以降のアメリカ金融界を分かり易く描いた社会派映画でもある。エンディングは超クール!

アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事! [DVD]

アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事! [DVD]



『セリ・ノワール』(アラン・コルノー 1979年 フランス 
 果敢にもジム・トンプソン『死ぬほどいい女』の映像化に挑んだフランス映画。タイトルの「セリ・ノワール」とはそのものズバリ「暗黒小説」の意。「フィルム・ノワール」なんて言葉もあるけれど、ジャンルそのものをタイトルに据えるあたり、製作者の並々ならぬ意欲がうかがえるではないか。この映画はとても気に入ったので、後日詳しい感想を書くつもり。

セリ・ノワール [DVD]

セリ・ノワール [DVD]



ミッション:8ミニッツ』(ダンカン・ジョーンズ 2011年 アメリ
 いきなり主人公が不条理な極限状態に放り込まれる様子、ちょっと教訓的なオチなど、懐かしの「ミステリー・ゾーン」的なテイストというか、SF映画ならではの面白さを感じさせてくれるのが嬉しかった。そんな無茶なと思いつつ、最後はついホロリとしてしまったよ。流行の「ループもの」かと思いきや、それに留まらずその先に進もうとする意欲が感じられるのがいい。

ミッション:8ミニッツ ブルーレイ+DVDセット

ミッション:8ミニッツ ブルーレイ+DVDセット



カウボーイ&エイリアン』(ジョン・ファヴロー)  2011年 アメリカ 
 タイトルそのままで何の捻りも無い駄作。このネタならもっと面白い見せ場がいくらでも出来そうな気がするなあ。エイリアンに憑依されたならず者を追って保安官が町から町へと旅をする(西部劇版『ヒドゥン』)とか、流れ者がやってきたゴーストタウンにはエイリアンが潜んでいるとか、エイリアンに操られた牛の群れが暴走するとか、エイリアンの兵器に旧式の武器しか持たないカウボーイたちがいかに立ち向かうかを丹念に描くとか・・・。端的に言って、もっと「西部劇」であるべきだと思う。保安官役でキース・キャラダインが出ていた。

カウボーイ&エイリアン 未体験ロング・バージョン ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

カウボーイ&エイリアン 未体験ロング・バージョン ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]



パレルモ・シューティング』(ヴィム・ヴェンダース 2008年 ドイツ/フランス/イタリア 
 初期ヴェンダースのファンとしては、『ランド・オブ・プレンティ』『アメリカ,家族のいる風景』といった薄味の近作には失望の連続であった。アメリカを離れてヨーロッパを舞台にした本作では、久しぶりにヴェンダースらしい冴えた映像感覚が楽しめる。主演のカンピーノ、デニス・ホッパーら俳優の顔つきもいい。ルー・リードもワンシーン出演。いかんせん「交通事故に遭遇したカメラマンがヨーロッパの街で生死の境界を彷徨い、死神に遭遇する」というお話はまるで大学生の撮った自主映画のようで気恥ずかしい。このお話のどこにヴェンダースが思い入れているのかさっぱり分からない。音楽はCANのイルミン・シュミットだったりする。

パレルモ・シューティング [DVD]

パレルモ・シューティング [DVD]


GANTZ』(佐藤信介) 2010年 日本 
GANTZ: PERFECT ANSWER』(佐藤信介) 2011年 日本 
 奥浩哉による大人気コミックの実写版。平和な生活を送っていた主人公が徴兵されていきなり戦場に駆り出されるというお話に、体感ゲーム以上の意味づけが成されていないのがもどかしい。残酷描写が手ぬるいのも一因か。戦闘の真っ最中に堂々と愁嘆場が演じられる古臭い演出にも辟易とさせられた。湿っぽい会話を交わしている間、敵は攻撃しないで待っててくれてるのかね。それにしても、これって『ミッション:8ミニッツ』と同じような展開の映画だよなあ。すなわちゲーム的な感性というやつか。

GANTZ [DVD]

GANTZ [DVD]



SPACE BATTLESHIP ヤマト』(山崎貴 2010年 日本 
 往年の人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の実写版。そんな企画にいちいち腹を立てるのも我ながら大人気ないなあと思うけど、さすがにこれはないだろう。統一感の無い演技、狭苦しい映像、エンディングではスティーヴン・タイラーのヴォーカルが流れ、馬鹿映画『アルマゲドン』と印象が直結してしまうのも困りものだ。そして、ここでも戦闘の真っ最中に堂々と愁嘆場が演じられる古臭い演出が・・・。それにしても、この時期「放射能除去装置」「放射能除去装置」と連呼されると落ち着かない気分にさせられる。

SPACE BATTLESHIP ヤマト スタンダード・エディション 【DVD】

SPACE BATTLESHIP ヤマト スタンダード・エディション 【DVD】



ヤッターマン』(三池崇史 2009年 日本 
 タツノコプロ原作の人気アニメを実写化した『ヤッターマン』。作り手が企画に対して自覚的な分だけ『ヤマト』のような惨劇には陥っていない。主要キャラクターの設定や、お約束のギャグや決め台詞、見せ場が次々再現され、往年のファンも楽しめるような作りになっている。映画化の方向性としてはこれはこれで間違っていないと思うけど、あまりに雑というかメリハリの無い演出、主人公の存在感の無さはいかがなものかと思う。女性キャラクターの酷い扱いはいかにも三池らしいが。「2号さん」というギャグには笑った。

ヤッターマン “てんこ盛りDVD”

ヤッターマン “てんこ盛りDVD”



『TOKYO!』(ミシェル・ゴンドリーレオス・カラックスポン・ジュノ 2008年 フランス/日本/韓国 
 フランス、韓国の気鋭の監督が東京を描くオムニバス映画。しかし東京の魅力的な風景などどこにも描かれていなくて、どのエピソードも自閉した印象が強い。監督のチョイスのせいもあろうが、これが異邦人から見た現在の「東京」なのかなあとも思う。伊福部昭作曲の『ゴジラ』のテーマに乗って東京の町を蹂躙する怪人メルド(フランス語で糞の意)を描くカラックス篇は大問題作だとは思うけれど、正直不快だった。引きこもりと美少女と地震(!)で東京を描いたポン・ジュノはやはり同世代の作家だなあと思う。映像センスも一番好み。ヲタ臭丸出しのラストシーンなんて一歩間違えると取り返しのつかないことになりそうなところだが、見事爽やかに決めて見せる。

TOKYO! [DVD]

TOKYO! [DVD]



ザ・ウォード/監禁病棟』(ジョン・カーペンター 2010年 アメリ
 ジョン・カーペンター先生久々の劇場用新作。前作『ゴースト・オブ・マーズ』が針の振り切れたようなダイナミックな作品だったのに比べると、いささか地味な仕上がりではある。何しろ上映時間は1時間半、舞台はほぼ精神病院の病棟のみ、出演者は新人ばかり、と『ハロウィン』の頃に戻ったかのような小規模の作品だ。霊的存在が直接暴力を振るう姿は『ザ・フォッグ』以来お馴染みのカーペンター節。オチに新鮮味はないものの、件の暴力もヒロインの葛藤の激烈さを描いたものと思えば妙に納得した。

ザ・ウォード 監禁病棟 [DVD]

ザ・ウォード 監禁病棟 [DVD]


 以上、3月末から4月末にかけて見た映画でした。