Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ブライアン・デ・パルマ―World is yours』(監修・三留まゆみ)

ブライアン・デ・パルマ―World is yours (映画秘宝COLLECTION (36))


 実を言うと、以前はデ・パルマがあまり好きではなかった。凝った(凝り過ぎた)映像がわざとらしくてどうにも好きになれなかったのだ。しかし歳を取るにつれて、次第に好きになってきた。上手く言えないけれど、映画好きならではの丁寧さというか、彼の映画の持つ「手作り感」みたいなものが好ましく思えるようになってきたのだ。ちなみに、全く同じ理由で歳をとるにつれて好きになってきたのが大林宣彦。それはさておき。


 デ・パルマの研究本ブライアン・デ・パルマ―World is yours』洋泉社)読む。かなり前から気になっていたのだけれど、表紙が気にいらなくて手に取るのを躊躇っていた。デビューから『ブラック・ダリア』までの全作品解説、俳優やスタッフ紹介、映像テクニック解説など、マニアならではの詳細な内容で読み応えたっぷり。本としてはスチールがいまいちなんじゃないかと不満はあるけれど、興味深く楽しい内容だった。『悪魔のシスター』以前の初期作品を見てみたいなあと思った。


 監修はデ・パルマといえばこの人、三留まゆみ氏。巻頭に掲げられた三留氏の献辞が全てを語っているだろう。「師匠、ブライアン・デ・パルマに捧げる。私たちはあなたの熱烈な支持者であることを永遠に誇りに思う。」・・・素晴らしい。デ・パルマ・マニアによるデ・パルマ・マニアの為の愛に溢れた一冊なんである。ちなみにデ・パーマ(デ・パルマに非ず)といえばこの人、の故今野雄二先生の寄稿もあり、今や涙なくしては読めないなあ。


 個人的にデ・パルマといえば、やっぱり『ミッドナイトクロス』だ。絢爛たる映像テクニックと私的なエモーションが絶妙に絡み合った傑作だと思う。



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