- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2005/08/27
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『秋日和』
監督/小津安二郎
脚本/小津安二郎、野田高梧
撮影/厚田雄春
音楽/斎藤高順
出演/原節子、司葉子、笠智衆、岡田茉莉子、佐田啓二、佐分利信、中村伸郎、北竜二
(1960年・日本・128分)
『お早よう』の子役・島津雅彦君の出ている小津作品を見たくて、『秋日和』(1960年)を見る。
旧友である三輪の七回忌に集まった間宮(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)の悪友三人は、三輪の娘アヤ子(司葉子)に縁談を持ちかける。しかしアヤ子は未亡人である母・秋子(原節子)がひとりぼっちになることが気がかりで縁談を断る。アヤ子が嫁ぐ気になるにはまず母親が再婚することだと思い立った間宮たちは、あれこれと策略を巡らすが・・・。
「父娘」を描くことの多かった小津監督が「母娘」を描いた『秋日和』。母娘の絆が丁寧に描かれていてとても感動的だ。終盤の温泉旅行のシーンなど涙なくしては見れまい。『東京物語』を始め、多くの小津作品で「娘」役を演じて来た原節子が初めて母親役を演じている。ちょっとした誤解から娘に責められて困惑した表情、そしてラストシーンの寂しさと満足感の混在した何ともいえぬ表情は忘れられない。
『秋日和』のもうひとつの見どころは、佐分利信、中村伸郎、北竜二のオヤジ三人組だろう。あの三人はリアル過ぎる。図々しい態度、あんまりな口の悪さ、昔からこうだったんだろうという関係性、すっかり奥さんたちに見透かされている浅はかな行動。「ああ、こういうオヤジいるよなあ」と思わず納得してしまうリアルさだ。特に間宮と田口は会社の上司にいがちな感じ。時代性もあろうか、ユーモアにくるんでいるとはいえ女性に対する態度はいかがなもんかなあと思う。まあ、その辺作り手はちゃんと承知と見えて、三人には手痛いしっぺ返しが待っているのだが。
個人的には、アヤ子の同僚・百合子を演じた岡田茉莉子が大ヒット。岡田茉莉子といえば、どうしても大女優然とした重いイメージであったが、本作では実に生き生きとしていて可愛いのだ。アヤ子よりはちょっと経験豊富で大人な百合子は、真面目すぎるアヤ子を「赤ん坊め!」と罵り、オヤジ三人組の悪巧みには義憤を感じて会社まで怒鳴りこんだりする。特に、寿司屋でのオヤジたちとの駆け引きには大笑いだった。
お目当てだった『お早よう』の子役・島津君は、佐分利信の息子役。ワンシーンのみの出演だったのが残念。