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『スーパー!』 SUPER
監督・脚本/ジェームズ・ガン
撮影/スティーヴ・ゲイナー
音楽/タイラー・ベイツ
出演/レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、リヴ・タイラー、ケヴィン・ベーコン、グレッグ・ヘンリー、マイケル・ルーカー
(2010年・96分・アメリカ)
昨年劇場で見逃して気になっていた『スーパー!』をチェック。監督は『ゾンビ』のリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本を担当、B級侵略SFものの快(怪)作『スリザー』を撮ったジェームズ・ガン。
主人公はダイナーで働く冴えない中年男フランク(レイン・ウィルソン)。愛妻のサラ(リヴ・タイラー)がヤクの売人ジョック(ケヴィン・ベーコン)に入れあげ、家を出て行ってしまった。神の言葉を聞いたフランクは、サラを取り戻すため正義のヒーローとなり悪と戦うことを決意する。手製のコスチュームを身にまとい、レンチで武装したフランクは、ヒーロー“クリムゾンボルト”に変身。夜な夜な悪党退治に出掛けるが・・・。
期待通りのケッ作で、昨年見てたら絶対ベストに選んでたなあ。なりきり素人ヒーローが活躍するというお話は『キック・アス』中年版の趣で、二番煎じみたいに思われそうだが、実際はぜんぜん違う。ヒーローに憧れたボンクラ高校生が奮闘する『キック・アス』は、(恐らく娯楽性を優先するあまり)後半になると普通のアクション映画みたいになっていた。面白い映画だとは思ったけど、一般人がヒーローになるため一線を越える(=人を殺す)という部分の描き方があまりに無神経な感じがしてひっかかった。一方『スーパー!』はその辺真っ向勝負しており、終盤の展開は『キック・アス』と好対照だ。『キック・アス』に感じていた違和感がすっきりと解消されたようで嬉しかった。個人的には、主人公の痛みがきちんと伝わってくる『スーパー!』の方が好きだなあ。
OPのアニメーションから伏線の張り方、アクションや台詞など、いちいち芸が細かいというか、細部に至るまで丹念に考え抜かれているのが嬉しい。さすが『スリザー』の監督らしくハードな残酷描写もてんこ盛り。暴力が暴力としてちゃんと描かれているのもいい。
主人公フランクを演じるのはレイン・ウィルソン。図体がデカくて常にびっくりしたような表情を浮かべているウィルソンは正にハマり役。相棒ボルティーを『JUNO/ジュノ』のエレン・ペイジが怪演。主人公を殺戮へと導く少女(『キック・アス』のヒットガール的役割)をハッキリとキ○ガイとして描き切っているところが偉い。少女、じゃないけど。妻役はリヴ・タイラー。『ロード・オブ・ザ・リング』の彼女が何でこんな汚れ役を、と思うが最後で納得。その他にケヴィン・ベーコン、『ヘンリー』のマイケル・ルーカー、デ・パルマの『ボディ・ダブル』なんかに出てたグレッグ・ヘンリーなど、脇役にもイイ顔が揃っている。
『キック・アス』見てサイコーだった!という人は別に見る必要ないと思うけど、『キック・アス』に違和感を感じた人には是非見て欲しい。ちなみに、これコメディじゃないから!これをコメディだと思って笑い飛ばせる人がいたら羨ましい。オレは無理だったなあ。一線を越えてしまって後戻り出来ない主人公を待つ結末、せめてもの救いである壁に貼られた○と、主人公が抱く○○○には泣きそうになっちゃったもん。
シャラップ・クライム!