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『大冒険』
監督/古沢憲吾
脚本/笠原良三、田波靖男
撮影/飯村正、小泉福造
音楽/広瀬健次郎、萩原哲晶
特技監督/円谷英二
出演/植木等、谷啓、ハナ肇、団令子、越路吹雪
(1965年・106分・日本)
何かお正月らしい映画を、と思いクレージー・キャッツ主演の『大冒険』(1965年)見る。クレージー・キャッツ結成10周年の記念映画であり、彼ら主演のシリーズ第4作に当たる本作は、それまでのサラリーマン物から大きく逸脱している。国際的なニセ札騒動に巻き込まれた雑誌記者(植木等)と発明狂の友人(谷啓)の冒険を描くスラップスティック・コメディで、派手なアクションや特撮を駆使した見せ場(特技監督は円谷英二!)まで盛り込まれている。あ、『危いことなら銭になる』と続けてニセ札の話を見てしまった。
主人公は警察とニセ札偽造団の両方から追われて逃げ回る。東京、名古屋、神戸と舞台を移しながら、フィリップ・ド・ブロカ映画のベルモンドよろしくひたすら走りまくるのだ。植木の走りっぷりがいい。ハナ肇、犬塚弘らクレージーのメンバーはそれぞれ刑事や雑誌社の編集長等で出演しているが、ほとんど植木主演と言ってもいい。植木の能天気で内面の見えない演技は無責任シリーズと同じだ。
終盤、舞台は孤島に作られたニセ札偽造団の秘密基地へ。黒幕の正体は・・・といきなりスケールの大きな展開を見せて唖然とさせられた。あまりに人間臭いクレージーの面々(そしてあの楽曲)と、こういう大がかりな仕掛けがどうもミスマッチな気もするが・・・。まあ、トンデモ展開、円谷特撮、ハリウッド調の大爆発、クレージーのミュージカル場面(最後は主題歌『大冒険マーチ』)、と盛り上がったのでいいか。お正月だし。
映画全体としては、アクション主体のスラップスティック・コメディなんで退屈はしないけど、個々のギャグはいささか泥臭くて古めかしい感じは否めず。笑ったのは、(1)ニセ札で国際的な経済の混乱が起こっているという新聞記事を読んだ植木が、「関係ねえ。俺にはニセ札も回ってこない」とか言い放ち、唐突に『遺憾に存じます』(名曲)を歌い始める冒頭の場面。植木はかつて体操選手だったようで(壁に写真が貼ってある)、ミュージカル場面の振りつけは体操の動きだ。(2)偽造団の潜水艦に潜入して捕らえられた植木が、魚雷発射口から排出されそうになって「これがホントの人間魚雷か」とうかつな発言をするところ。(3)孤島に作られた偽造団の秘密基地に連れ込まれる場面で、植木が「あっ、ほら穴だ」とどうでもいいような事を言うところ。(4)谷啓の一生懸命なパンチ。
最後にひとつだけ。主人公は警察と悪漢一味両方を相手に激しいアクションを見せる。と言っても、実のところ逃げ回るばかりで受け身一辺倒だ。植木の演技と相まって、次から次へ襲い来る危機を調子良く乗り切っていく、という感じ。なので、誘拐されたヒロインを救おうと悪漢の一人に殴りかかる場面にはギョっとしてしまった。無責任男・植木が自ら暴力を!?と・・・。あれは、ちょっと足をひっかけて転ばせるくらいにしといて欲しかったなあ。そんなこと気にしてるの俺だけか。