Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『アウトレイジ 最終章』(北野武)


 昨年見た映画の感想です。北野武監督『アウトレイジ 最終章』について。


 『アウトレイジ』シリーズ第3作は、時代遅れの極道と揶揄される主人公(ビートたけし)が、仁義もへったくれもない現代ヤクザの抗争劇に落とし前をつけて回る、というお話だった。様々な殺しのテクニックだけが前景化していた1作目、2作目に比べると、意外なくらい見やすいというか、オーソドックスなやくざ映画の様相を保っているなあという印象。アクション映画といいながら実は動きのある場面はほとんどない。登場人物たちが座ったり突っ立ったりして話し合っている場面の方が圧倒的に多くて、俳優たちの顔芸が大きな見せ場になっている。濃い顔の俳優たちの中では、やはり西田敏行が圧倒的に面白かった。(急逝した大杉漣も良い味を出していました)


 たけし演じる主人公の落とし前のつけ方は『ソナチネ』に回帰したようだが、見守る女の姿もなく、舗道に放置された亡骸は『ソナチネ』よりさらに深い虚無感に包まれている。


 音楽は『座頭市』(2003年)以来、北野作品の常連となった鈴木慶一(本作でめでたく第41回日本アカデミー賞の優秀賞を受賞)。注目の音楽は、ピアノとサックスが流れるいかにもハードボイルドっぽい曲もあるものの、全体的には映像より後退していっそう効果音に近づいている。パーティ襲撃シーンに延々と流れるアップテンポな曲は慶一氏らしい面白さだった。 


(『アウトレイジ 最終章』 監督・脚本/北野武 撮影/柳島克己 音楽/鈴木慶一 出演/ビートたけし西田敏行大森南朋ピエール瀧大杉漣塩見三省、白竜、金田時男、岸部一徳、、松重豊中村育二名高達男光石研 2017年 104分 日本)