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先日(11日)NHKで放映された『最後の講義 映画監督・大林宣彦』見ました。各界の著名人が「もし今日が人生最後の講義だとしたら、何を伝えたいか」をテーマに講義するという番組。大林監督は最新作『花筐』クランクインの直前に肺がんが発覚し、余命宣告を受けながら映画を完成させ、現在も闘病中。痩せ衰えた姿は痛々しかったものの、映画を志す大学生たちを前に、あの特徴的な優しい口調で、映画の存在意義を熱心に語っておられました。講義の中で特に印象的だったのは、今は「戦前を生きている」のだ、という言葉。そして、「(世の中が良い方向に進歩して)映画が必要とされない時代が来るまで、映画を撮り続けるのだ」という部分だった。
大林監督と言えば、自分の世代には「尾道三部作」で絶大な人気があったけど、今の若い人たち(講義を聞いていた大学生たち)は彼の作品を見たことがあるのだろうか。「最後の講義」の語りを聞いて感動した若者が、『ハウス』とか『ねらわれた学園』とか見て脱力する様子が目に浮かぶようだが、まあそんな出会いがあってもいいよね。大林監督の魅力というか特異性は、名作路線の「尾道三部作」以外からも充分に感じられるし。
正直のところ、自分が若い頃は大林監督の映画が苦手だった。作為的な画面構成や演出タッチがわざとらしく感じられて嫌だったのだ(同じような理由で苦手だったのがブライアン・デ・パルマ)。ところが、自分が年を取るごとに、彼(ら)の映画は手作り感覚溢れる個性的で好ましいものと感じられるようになった。セルフリメイク版の『転校生』を見た時には、まるで新人が撮ったような若々しい映像でびっくりしたものだ。歳を取っても「洗練」とは無縁と言うか、枯れた作風にならないのが良いじゃないですか。「最後の講義」でも、文芸座で行われたレトロスペクティヴで自作を見直して「我ながらブレてないと思った」と語っておられた。多作な監督ゆえに全貌を把握しているとは言えないので、未見の作品を中心に大林作品を見直そうかなと思った次第。
- 作者: 河出書房新社編集部
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