Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『承認をめぐる病』(斉藤環)

承認をめぐる病

承認をめぐる病


 思うところあって、精神科医斉藤環氏の『承認をめぐる病』を再読。


 著者の分析によると、若者たちの間に「承認依存」(他者から認められなければ、自分を愛することすら難しい)の傾向が強くなり、就労動機さえ「食べるために働くのではなく、他者からの承認を得るために働く」という若者が増えているという。他人から認めてもらいたいという「承認欲求」は若者に限らず誰しも持っているものだろうが、常に他人の評価ばかりを気にしている依存状態に陥る者が多いというこの状況はどのようにして形成されているのか、どのように対応するべきなのか。といったことを論じている一冊。興味深い内容で、膝を打つことしきり。


 時折、他人から認められたいというアピールが極端に強い人がいるが、そんな人は正に「承認依存」に陥っているのかもしれないなあと思い当たったり。コミュニケーション偏重により、昔は「個性」として認められていたはずの「無口だけど絵が得意」とか「無口だけど運動が得意」とかいった部分が切り捨てられていくという話。スクールカーストはすなわち家柄や金持ちといった出自ではなくて、コミュニケーション能力の優劣(要するにいかにウケを取れるか)で形作られていく。何だかなあと思うが、斉藤氏はそんな現状といかに切り結ぶか真摯に取り組んでいて、とても響くものがあった。


 しかし自分のような人種には生き辛い世の中になって来ているのだなあと思う。読んでいて、娘のことが心配になってしまった。娘はまだ5歳だけど、この先こんな辛い世界と対峙しなければならないのか。例えコミュ障でも他人の評価なんて関係なく乗り切っていける逞しさを身に着けて欲しいところだが。