Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ライド・ライズ・ロウアー』(デヴィッド・バーン)

【日本語字幕入・日本版】ライド・ライズ・ロウアー [Blu-ray]


 DVD発売されたデヴィッド・バーン『ライド・ライズ・ロウアー』見る。ブライアン・イーノとのコラボレーション・アルバム『Everything That Happens Will Happen Today』(2009年)のツアーの様子を捉えたライヴ・ドキュメンタリー。バーンの本格的なライヴ映像は『Between The Teeth』(1992年)以来久しぶりに見たけれど、とても素晴らしかった。


 バーンは「ありきたりな演出とは違うもの、視覚的要素のあるものを見せたかった」と語る。今回は3人のダンサーをフロントに配して、曲ごとに違った振り付けでパフォーマンスを見せる。といっても派手なものではなく、極めてシンプルな演出で見ていて気持ちが良かった。本作ではライヴの模様に加え、参加したミュージシャンやダンサーたち、振付師、そしてブライアン・イーノらのインタビュー、バックステージの映像などによって構成されている。


 収録された曲は、

 
M1. Once In a Lifetime
M2. Life is Long
M3. I Zimbra
M4. Road to Nowhere
M5. One Fine Day
M6. The Great Curve
M7. My Big Nurse
M8. Burning Down the House
M9. Houses In Motion
M10. Air
M11. Life During Wartime
M12. Heaven
M13. I Feel My Stuff
M14. Everything that Happens Will Happen Today


 『Everything That Happens Will Happen Today』から5曲、残りの9曲はソロ曲ではなくて何とトーキング・ヘッズ時代のナンバーで占められている。M3やM8といったリズム重視の曲ももちろんかっこいいし楽しい(『ストップ・メイキング・センス』をコンパクトに再現したような感じもあり)のだけれど、むしろM4やM12といったゆったりめの曲がいい。さらに言えば、ヘッズ時代の曲よりも、最近の曲の方が断然素晴らしい。M5やM7の暖かい感じは本作のハイライトといえるのではないかと思う。ヘッズ時代の曲で言えば、M4 Road to Nowhere は個人的にとても思い出深い曲なんで嬉しかった。

 
 本作には、バーンとイーノのツーショット・インタビュー(というか雑談)の場面がある。スキンヘッドに鋭い目つきで堂々たる風格のイーノに対し、目が泳いじゃって落ち着きの無いバーン。白髪となり年齢を重ねても、ヘッズ時代と変わらぬ挙動不審な様子を見て妙に安心してしまった。


 バーンはトーキング・ヘッズ解散後も、切れ間無く旺盛な活動を続けている。最近では『Everything That Happens Will Happen Today』も良かったし、ファットボーイ・スリムとのコラボレーション・アルバム『Here Lies Love』(元フィリピン大統領の未亡人イメルダ夫人の人生をテーマにしたダンス・アルバム!)も相当の怪作だった。そこにきて今回の充実したライヴ映像。長年のファンとしては喜ばしい限りだ。今後とも注目していきたい。


 ちなみに、『ライド・ライズ・ロウアー』は8月から劇場公開もされるようだ(UPLINKにてレイトショー)。仙台でもやってくれないかなあ。大きなスクリーンと良い音響でもう一度楽しみたい。