Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー』(デヴィッド・バーン)

デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー [DVD]


デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー』 True Stories


 監督/デヴィッド・バーン
 脚本/ベス・ヘンリー
 撮影/エド・ラッハマン
 音楽/トーキング・ヘッズ
 出演/ジョン・グッドマン、スージー・カーツ、デヴィッド・バーン
 (1986年・90分・アメリカ)


 デヴィッド・バーン関連でもう一本。デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー』True Stories(1986年)。トーキング・ヘッズのアルバム『トゥルー・ストーリーズ』の別バージョンとでも言うべき映画版。確か銀座にあるテアトル西友のOP作品じゃなかったかなあ。学生時代、友人のノヴァ君と見に行ったっけ。


 テキサスの新聞記事に載った実話を集めた映画・・・といっても三面記事的なドギツいエピソードはなくて、アメリカの田舎町の愉快なスケッチ集といった趣。バーンの持つ尖がったアーティスト性が全面に出たのが『ストップ・メイキング・センス』だとすれば、本作はバーンのユーモラスな感性が滲むような仕上がりとなっている。最初に映画館で見た時は「何を言いたいんだろうなあこの映画」と腑に落ちなかったものだが、ヘッズのディスコグラフィーと併せて見ると、バーン独自の「アメリカ」探求の一環だったんだなあと思う。見直せば見直すほど好きになる不思議な映画である。


 監督を務めたバーンは、案内役として劇中に登場、例のびっくりしたような表情でテキサスの田舎町をうろうろする。クラブに集まった町の人たちが口パクで歌い踊る「ワイルド・ワイルド・ライフ」、クライマックスのカントリー&ウエスタンコンサートなど、音楽の見せ場もふんだんに盛り込まれている。モテないことに悩む熊さんみたいな主人公を演じるのはコーエン兄弟の常連俳優ジョン・グッドマンだ。


 トーキング・ヘッズのアルバム版『トゥルー・ストーリーズ』(1986年)は、前作『リトル・クリーチャーズ』に続いて、シンプルなバンドサウンドでバラエティー豊かな楽曲が並ぶ楽しい一枚。ヘッズ最後のヒット曲となった「ワイルド・ワイルド・ライフ」、「ラブ・フォー・セール」等、ヌケの良い曲ばかりで、今でもとても好きなアルバムだ。



トゥルー・ストーリーズ



 デヴィッド・バーントーキング・ヘッズは映像作品にも力を入れていて、『ストップ・メイキング・センス』『トゥルー・ストーリー』といった映画の他、ミュージック・ビデオにも精力的に取り組んでいた。ヘッズのヴィデオ・クリップを集めた『ストーリーテリングジャイアント』 Storytelling Giant(1988年)は、彼らの代表曲がズラリと並ぶ必見の作品。ジム・ジャームッシュが監督した「レディ・ドント・マインド」他、どれも工夫が凝らされていて面白い。曲の合間には、書き割りのセットの前で様々な人たちがコメントするという『トゥルー・ストーリー』に繋がる演出も見られて興味深い。『ストップ・メイキング・センス』や『トゥルー・ストーリー』はDVDショップやレンタル屋に置いてあるけど、『ストーリーテリングジャイアント』はまだDVD化されていないんじゃないかなあ。今回久々に見てみたらVHSテープが劣化していてノイズがひどかった。求む、DVD化。