Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『街角 桃色の店』(エルンスト・ルビッチ)

街角 桃色の店 [DVD] FRT-143

街角 桃色の店 [DVD] FRT-143


『街角 桃色の店』 THE SHOP AROUND THE CORNER


 監督/エルンスト・ルビッチ
 脚本/サムソン・ラファエルソン
 撮影/ウィリアム・H・ダニエルズ
 音楽/ウェルナー・リヒャルト・ハイマン
 出演/ジェームズ・スチュアートマーガレット・サラヴァン、フランク・モーガン、ジョゼフ・シルドクラウト
 (1940年・97分・アメリカ)


 エルンスト・ルビッチ監督『街角 桃色の店』(1940年)。ロマンティック・コメディの名作中の名作。たまにはこういうクラシック映画も見るのだ。
        

 『桃色の店』(ピンクの店、と読ませるらしい)なんて言われると何やらいかがわしい店かと思っちゃうけれど、別に風俗店ではない(当たり前だ)。イメージとしては「恋は桃色」(by細野晴臣)ってな感じでしょうか。


 舞台は、鞄や革製品を扱う雑貨店。店員のクラリク(ジェームズ・スチュアート)とクララ(マーガレット・サラヴァン)はいつも言い争ってばかり。クララには心を寄せる文通相手がいた。クラリクにも心を寄せる文通相手がおり、実はお互いそうとは知らず文通を続けていたのだった。2人は意を決して文通相手と会う約束をするが・・・。


 いがみ合う2人がやがて和解し結ばれるまでを描く極めてオーソドックスな恋愛コメディで、往年のハリウッド映画ならではの端正な仕上がりには惚れ惚れした。元が戯曲なだけにほとんど会話劇と言ってもいいような内容だけれど、会話のテンポ、人物の出し入れ、小道具(オルゴール付きのシガレットケース等)の使い方、画面で見せる/見せないの選択、と巨匠ルビッチの名人芸が堪能できる。主人公の2人は勿論の事、雑貨店のオーナー、店の同僚たち、使い走りの少年といった脇役が生き生きと描かれ、それぞれの行く末をきっちりフォローするのがとても気持ち良い。


 見ていて謎が二つあった。ひとつは、サラヴァンがスチュアートに対してO脚じゃないかと気にすること。これはDVDの解説に曰く「当時女性が男性と付き合う大切な条件のひとつだった」とのこと。もうひとつは、何故ブタペストが舞台になってるのかなあということ。これはどうやら原作(戯曲)がハンガリーの作品だからのようだ。ちなみに、本作の手紙をEメールに変えてリメイクしたのが『ユー・ガット・メール』(トム・ハンクスメグ・ライアン主演)なのだな。