『離魂』（フレッド・タン）

離魂 (日本語字幕) [DVD]

『離魂』　離魂　SPIRIT OF THE SPIRIT

　監督・脚本／フレッド・タン
　撮影／ヤン・ウェイハン
　音楽／ピーター・チャン
　製作／ロー・ウェイ
　出演／ポーリン・ウォン、ヴィナ・シュー、ウー・シャオカン、クー・クアンチョン
　（1987年・95分・香港）

　41歳の若さで夭逝した台湾のフレッド・タン監督の『離魂』（1987年）。黒沢清監督の著作『映画はおそろしい』でタイトルを目にして以来、ずーっと気になっていた1本だ。ＤＶＤを発見したので、早速チェックしてみた。黒沢清の推薦文に曰く「80年代、こわくて誰も手が出せなかったこの分野にいち早く切り込んでいった勇気を、私は同じアジア人として誇らしく思う」。

　自分を捨てた男に殺された女性ホイ（ヴィナ・シュー）の怨念が舞踏家の女性ルーリン（ポーリン・ウォン）に取り憑き、彼女の身体を借りて復讐を果たしていく・・・というお話。幽霊、猟奇殺人、呪術、怨霊との対決、霊界、舞踏等々、盛りだくさんな内容をテンポ良く見せていく。古典的な怪奇映画の筋立てに、いかにも80年代っぽいファッション（レオタード、アラレちゃん眼鏡！）や音楽がミックスされ、当時の香港映画ならではの荒々しい画質音質と相まって、何とも言えない妙な雰囲気を醸し出している。スピーディーなテンポはアメリカ映画的ではあるけれど、結果として「香港映画」としか呼びようのない映画に仕上がっているのが面白い。スモークが立ちこめる中に逆光で人物が現れるという撮り方も（カーペンター！）何だか懐かしい。