- 作者: ティム・オブライエン,Tim O'Brien,生井英考
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/01
- メディア: 文庫
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月末進行の夕刻、さあもうひと踏ん張りとPCに向かった矢先に、docomo緊急エリアメールが!久々に聞いたあの不快な音色には背筋がゾーッとした。幸い仙台市はほとんど揺れなかったけれど、何だかどっと疲れが出て、残業切り上げて帰って来た。いい加減勘弁して欲しいよホント。
さて。
『ニュークリア・エイジ』に思うところあったので、ティム・オブライエン『カチアートを追跡して』(1978年)を再読してみた。
ベトナム戦争の真っ最中、主人公ポールの所属する隊からカチアートが消えた。カチアートはベトナムの戦場から遥か8,600マイル彼方のパリを目指して脱走したのだという。コーソン中尉率いる第三分隊は脱走兵カチアートの追跡を開始する。神鬼出没のカチアートに導かれるように、やがて分隊は国境を超えてゆくのだが・・・。(以下、ネタバレありです)
ティム・オブライエンが自身の従軍経験を元に執筆した一連の小説(『本当の戦争の話をしよう』『僕が戦場で死んだら』等)のリアルな戦場の描写に、ファンタジー風味が加わった異色の戦争文学。
ベトナムの戦場からパリまで旅してゆく主人公たちの奇想天外な冒険と、夜間歩哨に立つ主人公の回想が交互に語られる。最後は、全てが歩哨に立つ主人公の空想かもしれないという感じで幕を閉じる。前に読んだ時は、それで「腑に落ちて」納得したように思う。しかし今回ばかりは「本当であって欲しい」と強く感じた。再読して『カチアートを追跡して』をつまらなく感じたとか、結末に納得できなかったとか、そういう事ではない。本当にベトナムからパリまで辿り着いたっていいじゃないか。そうであって欲しい、俺はそんな「物語」の強度を信じたいのだ、そういう風に強く感じた。的外れな感想かもしれないけれど。前に読んだ時は、少しもそんな事を思わなかったのに。