Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『がんばれ!ベアーズ』(マイケル・リッチー)

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がんばれ!ベアーズ』 THE BAD NEWS BEARS


 監督/マイケル・リッチー
 脚本/ビル・ランカスター
 撮影/ジョン・A・アロンゾ
 音楽/ジェリー・フィールディング
 出演/ウォルター・マッソーテイタム・オニール、ヴィク・モロー、ジャッキー・アール・ヘイリー
  (1976年・103分・アメリカ)


 70年代の大ヒット作コメディがんばれ!ベアーズ見る。弱小少年野球チーム「ベアーズ」の子供たちと、中年コーチ(ウォルター・マッソー)の交流を描く。 


 公開当時のコピーはこんな感じ。
 「愛を投げ、打ち、走る はじめて燃えたちびっ子13人!
  名優ウォルター・マッソーと 最年少アカデミー受賞者テイタム・オニールはじめ 
  子役のオールスターチームが、がっちりスクラム組んで贈る 涙と笑いのファミリー・メルヘン!!」


 実のところ「ファミリー・メルヘン!!」なんてほのぼの感よりも、ちょっと突き放したリアルな手触りが感じられる映画であった。ストーリーを要約すれば、はみ出し者が集まったチームが意外な活躍を見せるというアメリカ映画お得意のパターン。でもストーリーの主眼はそれほど勝利に置かれてないように見えたなあ。子供たちがぐんぐん成長するとか、固い絆で結ばれるとか、そういう感動的な盛り上がりはなくて、最後なんかあっさり負けちゃうし。でも、そんなところが良かった。野球の場面で言えば、あんまりカットを割って誤魔化さずに、きちんとプレーを見せていくのがいい。


 子供たちのドラマは最小限に抑えられていて、球場を離れてのエピソードは、ピッチャーのアマンダ(テイタム・オニール)と、不良少年ケリー(ジャッキー・アール・ヘイリー)以外は描かれていない。子供たちの話ではなくて、完全に大人目線で描かれていると言ってもいい。ウォルター・マッソー演じる主人公は、相当にろくでもない人物だ。飲酒、喫煙当たり前。しかも、飲酒運転する場面(子供たちを乗せたままの場面も)が何度も出てくる。仕事のプール清掃を子供たちにやらせてたり、昔の恋人の娘(テータム・オニール)に無理矢理野球させたり。むっつりとした不機嫌な表情のウォルター・マッソーを見てると、楽天ベンチの星野監督を思い出したりして。ジャージ姿がやけに似合うヴィク・モローとの対立も面白かったし、ほのぼのファミリー映画と言うよりは、目的を見失っていた中年男が生きる希望を(ほんの少し)取り戻すドラマ、に見えたなあ。


 子供たちは皆子供らしい存在感を発揮している。いかにも「子役」然としたわざとらしい演技をする子がいないのがいい。テイタム・オニールは引退しちゃったし、あの子役たちは今頃どうしているんだろう。唯一、バイクを乗り回す不良少年を演じたジャッキー・アール・ヘイリーが現在も活躍中だ。最近は『ウォッチメン』(ロールシャッハ役)、リメイク版『エルム街の悪夢』(フレディ役)とディープな役柄が定着しつつある。
 

 音楽はジェリー・フィールディングサム・ペキンパー作品(『ワイルド・バンチ』『わらの犬』他)、イーストウッド主演作(『アウトロー』『ダーティ・ハリー3』他)等、70年代アクション好きにはお馴染みの作曲家だ。アクション映画でのおっかない曲調とは打って変わって、「カルメン」他既成曲を活用したユーモラスな音楽が楽しい。