- 出版社/メーカー: エプコット
- 発売日: 2003/11/28
- メディア: DVD
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『ザ・シャウト/さまよえる幻響』 THE SHOUT
監督/イエジー・スコリモフスキ
製作/ジェレミー・トーマス
原作/ロバート・グレイヴス
脚本/マイケル・オースティン、イエジー・スコリモフスキ
撮影/マイク・モロイ
音楽/アンソニー・バンクス、マイケル・ラザフォード
出演/アラン・ベイツ、スザンナ・ヨーク、ジョン・ハート、ロバート・スティーヴンス、ティム・カリー
(1978年・87分・イギリス)
新作『エッセンシャル・キリング』が仙台でも公開されたので、予習としてスコモリフスキ監督の旧作『ザ・シャウト/さまよえる幻響』(1978年)を再見。
『ザ・シャウト さまよえる幻響』はユーロ・トラッシュを専門としカルト作品を連発していた「TRASH MOUNTAIN VIDEO」レーベルからリリースされた日本未公開作。当時(2003年)、店頭でDVDを手に取って見たら、こちらに「絶対に買って見ろ!」と強く訴えかけるサムシングを感じた。それが意味不明のタイトルのせいなのか、陰気な英国俳優の顔つきのせいなのか、凄まじく雑でいい加減なバッケージの迫力のせいなのか、その原因は分からない。で、直感を信じて買ってみたところ、これが大当たりだった。
前衛音楽家である主人公(ジョン・ハート)は教会の前で知り合った謎の男(アラン・ベイツ)を食事に招待する。男はアボリジニの魔術を身に付け、叫び声で相手を殺す事が出来るという。カリスマ性を秘めたその男に、家庭が乗っ取られていく・・・というお話。
これはもう予想を遥かに上回るとんでもなくヘンな映画である。滅法面白いのは間違いないが、さてこの魅力をどのように言葉にしたら良いものやら途方に暮れてしまう。ノイズがひとつのテーマになっている・・・と書き出した瞬間、ノイズを録音する主人公の手つき、謎の男の黒いコート、動物たちに見守られたクリケットの試合、砂浜で崩れ落ちる羊、ベーコンの絵画を模倣する女の裸体、落雷で燃え上がる小屋の映像などが脳裏にフラッシュバックのごとく噴出し眩暈を覚える。今回再見しても、混迷の度合いは変わらなかった。ジャンルを限定しかねる不可解な映像の感触は一層楽しめたと思うが。
スザンヌ・ヨークが出ているせいか、アルトマンの『イメージズ』を連想するところもあった。ズーミングの多用、鏡越しの映像、おっかない音楽の使用とか、演出もどことなく似ている。『イメージズ』との二本立て、もしくは黒沢清の『叫』と「シャウト」二本立てで見ると面白そうだ。
イエジー・スコモリフスキはワイダの『夜の終りに』やポランスキーの『水の中のナイフ』等で脚本を担当、カルト映画『早春』の監督として名高い人物。『早春』は残念ながら未見。『ザ・シャウト』の他には『出発』(ジャン=ピエール・レオー主演)という青春映画を見たが、リチャード・レスターばりのポップな映像だったと記憶する。『ザ・シャウト』との関連性は見出せず、謎は深まるばかりだ。旧作の紹介も進んでいるので、『エッセンシャル・キリング』と併せてチェックしていきたい。