- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2011/09/09
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『トゥルー・グリット』 TRUE GRIT
監督・脚本/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ
撮影/ロジャー・ディーキンス
音楽/カーター・バーウェル
出演/ヘイリー・スタインフェルド、ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパー
(2010年・110分・アメリカ)
ヘンリー・ハサウェイ監督、ジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』(1969年)をコーエン兄弟がリメイクした『トゥルー・グリット』。旧作でジョン・ウェインが演じた隻眼の保安官ルースター・コグバーンをジェフ・ブリッジスが演じている。
流れ者のトム・チェイニーに父親を殺された14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、大酒飲みの老保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)に逃亡中のトムの追跡を依頼する。別の容疑でトムを追ってきたテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わり、3人で追跡を開始するが・・・。
クリント・イーストウッドと共演した『サンダーボルト』(1974年)ではまだ若造だったジェフ・ブリッジス。今や堂々たる風格で老保安官を好演している。ジェフ・ブリッジスの味わい深い顔つき、体型、声、身のこなしを見ているだけで楽しい気持ちになる。酔っぱらい演技もお見事。共演のマット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパーら脇役も皆イイ顔つきをしている。主人公マティ役のヘイリー・スタインフェルドも子役臭いわざとらしさが無くて良かった。
俳優は良い、お話はシンプルだけど面白い、アクション演出(と言うより暴力描写か)は迫力がある、美術や衣装も見事、撮影も美しい、なのに何かが違うなあという違和感が拭えないままエンディングを迎えてしまった。同じくリメイク西部劇である『3時10分、決断のとき』(2007年)を見た時にはこんな違和感は感じなかった。この違和感は何だろうか。
コーエン兄弟の作風にはちょっと突き放した冷たい所がある。題材と上手くハマると『ノーカントリー』のような傑作が生まれるけれど、思うに今回は題材と若干齟齬を来しているのではないか。物凄く大雑把に言うと、物語が要請しているはずの活劇的な興奮や人間味に欠けるような気がする。リメイクだからって無理やり新解釈や新たな見せ場を作らなくてもいい訳で、『3時10分、決断のとき』のようにごく真っ当な活劇の魅力を味あわせてくれればそれでいいんじゃないかと思う。コーエン兄弟の志向はいささか文学的というか、思わせぶりに過ぎるところがあるので、余計にそう思えるのかもしれない。単純に好みの問題かもしれないけれど。
『トゥルー・グリット』では、復讐を終えたマティのその後が語られる。この後日談のお陰で、奇妙な後味を獲得しているけれど、やっぱり蛇足だなあという感じは免れない。ルースター・コグバーンの失われた右目が「トゥルー・グリット」(本当の勇者)の証なら、片腕を失ったマティもまたトゥルー・グリットになったのだ・・・というところに着地させたいならば、やっぱり本篇がもっと純粋活劇として機能していないと難しいんではないかと思う。